2022年10月08日

ビュッケブルグ歳時記 282

ドイツの健康保険について


 この国の健康保険は、日本のとも、他のヨーロッパの他の国の保険とも少し違うのです。そのシステムを簡単にお知らせしてみます。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               この国では今だに GKV (法定の健康保険)と PKV (私的健康保険)と、いわゆるDual-system(二進法) が、反対派の大きな抵抗があるにもかかわらず今だに施行されているのです。

 この国の健康保険の歴史はとても古く、1848年にすでに公務員がPKVの如き保険制度を作っていたという記録があるとのことです。
 そして1883年に、ビスマルクが労働者のために作ったのが GKV保険で、雇い主が3分の2を,、労働者が3分の1を払う健康保険で、これがローロッパで社会保険を施行した最初の国、ドイツが国民の健康保持のために作った保険制度だったということです。
 最初は10%の国民がこの保険に守られていたそうですが、現在では88%の国民がこの保険で健康を守られているわけです。 

 GKV は現在、73百万人の勤労市民とその家族が毎月、給料の14−16%を健康保険料として支払うことによって、PKV は、8.7百万人の多額の給料をもらう国民、国家公務員、自営業の人達が自由意志で、GKVよりも、約3倍高い保険料を支払うことによってこの国の国民の健康が守られているのです。
 この二進法の保険は最近までオランダや北欧の国でも使用されていたということですが、現在はこの国だけが用いている制度のようです。

 この、見方によっては”2等級の医学が行われている”とも見える保険制度が今も行われている理由を、GKV と PKV の両面から挙げてみます。
* GKV の利点 ー 誰に対しても同等な医療仕事をする。地方に出る医者が多くなる。(現在は都市の医者の方が報酬が高いので、多くの地方で医者不在に苦しんでいる) 保険料金が一律。

* PKV の利点 ー PKV は目障りと言われているがこのシステムが払う金額は全体のシステムに大きな好影響を与ている。PKVが無くなる場合は、年に
55000ユーロが不足することになるので、現存の医師診察所を30%閉鎖することになる。   

 このように生命という非常に大切なものを扱う医療機関が、二通りの顔を持っていることについてはこの国でもいろいろな意見があるようです。
 例えば選挙が行われる場合は必ずこの問題が取り上げられるようです。今回の場合もSPD とみどりの党はPKV 廃止に賛成、FDPは反対。(通常は賛成派にLinke(左翼)が、反対派にCDU/CSUが加わる)このような状態なのでこの制度が改まる見通しは薄いと言われています。

 また実際に医療に関わる医者も二つの意見に分かれていることも明瞭です。
ベルリンを含む大都市だけではなく、何処の街でもPKV 保険加入者だけしか診ないという医者がいることも周知のことです。PKV患者の治療費はGKVの患者より2.5%高いということですから。 

 このような状態の中での診察、医療法の違いは、テルミン(最初の診察の予定日)が迅速に決まることと、診察を待つ時間が皆無ということだけで、医学的には区別なしと言われています。

 この、”大きくて小さい、小さくて大きい”問題を除くと、この国の医療は、GKVに入っていれば、安くて、安心出来ると言われています。
 



aokijuku at 00:30│コメント(0)

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