2019年07月27日

ビュッケブルグ歳時記 207

ヨーロッパ最強女性

 先日のEU委員会会長の選出については、日本にも詳しい報道があったと思います。EU議会やその運営法などの専門的なことはわたしにはよく判らないのですが、僅かの票差でEU委員会長に選出された女性 Ursula von der Leyen (以下v. L.)について知ったことや、この事をめぐって起きたこの国の政治の変化の中から、気のついた事を書いてみたいと思います。読んでいただけると嬉しいです。

EU選挙から会長選挙日まで、この国では、ドイツ人W.氏(CSU)か、オランダ人のT. 氏(SPD)が会長候補者だと思っていたのですが、選挙の13日前になって、何らかの理由で2人の候補が取り消され、それまでメルケル政党の連邦国防大臣として、少々のミスを交えて任務をしていたv. L.. 氏にお伺いがたてられたことを市民は知らされたのです。
 これに対して彼女は即刻の了解を出し、当選不当選の如何を問わず、国防大臣の役を降りることを公表し、必要な票をとるための演説の用意にかかったということです。会長当選のために必要な票数の獲得は、その時点では曖昧模糊だったようです。
 会長としてのEU発展への意向演説は、ヨーロッパの未来だけではなく、EU の未来も、そして 彼女の個人的な政治進路もかかっている超重要な意志表示を意味しているわけです。

 演説の概要を簡単に書いてみます。
 「私は60年前にブラッセル市で生まれた。ヨーロピアンとして生まれ、ヨーロピアンとしての教育を受け、そこへ再び戻ってこられるようになれればこの上なくうれしい。私が会長となった場合にはドイツ人会長ではなくヨーロッパ人会長として役目を果たしたい。ーーフランス語でーー40年前に、ホロコースト残命者のS. Veil (女性)氏が初めてEU 議員に選ばれれたことを思い出すと、フランスがこの議会の男女平等に力を添えたことに行き当たり、同国の平等への執念実現に感謝する。ーードイツ語でーー歴史的な見方として、大戦の後の荒野に、EUという大きなモノ、平和(像)を造り上げた過去の政治家に対しても尊敬と感謝の念を忘れていない。ーー英語でーー60年代に貿易関係の仕事をしていた私の父親は、子どもの私たちに、EG 機構になって再び世界と取引をすることなった。取引をすることは友達を作ることでもある。友達間には喧嘩は無い、と良く話してくれていた。」

 この、13日間で用意された3国語による彼女の演説は、反対派の党からの拍手も多く得て、僅かな得票の差でも、35000人のEU 議会最初の女性会長としての席が彼女に与えられる結果になったのです。

 33分間にわたる演説の最後は「EU はヨーロッパだけではなく全世界への責任を持たされている。このことは苦痛とも云えることだが、反面、ヨーロッパ人に持たされた”高潔な義務”とも云えるのではないか」そして最後に「このことは今の若者達の要望でもあるのです。私の子ども達(7人)は、『ママ、時間を無駄にしないで、出て行って直ぐ何かを始めなさい』と云って送り出してくれました」満場拍手。

 この会長選出場面からは様々なことを教えられるように思います。第1に「話すことの大切さ」です。今回は演説になりますが、政治家と市民の繋がりはやはり「言葉」だと思うのです。言葉が無い政治の行く末は考え方も暴力的になるのでは。
 第2は「若い人達の意見をおろそかにしないこと」です。
 今、活発に活動をしている“Fridays for Future" も、タイムリーだとの見方の反面、このために政治がやっと動き出したとも云えるのではないでしょうか。
 
 そして、日本で参議院選挙のあった週に、デジタル新聞で「政治の話をしない社会はダメ」との標題を初めて見たときにはうれしくなり、内容を直ぐ確かめました。この発言は米国留学から帰って来た女子学生のもので、彼女はアメリカの大学内での政治についての話し合いに感激し、その感想を述べたということでした。
 世界中何処でも若い人の目は確かなことを見届けていると心強く思うのです。


aokijuku at 00:30│コメント(0)

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