2019年05月25日
ビュッケブルグ歳時記 203
オンライン陳情
4月の末から5月の初めにかけてはこの国ではAbiturの季節です。Abitur(以下Abiと略す)とは高校卒業と大学入学資格試験を意味し、日本の大学入学試験に相当するものです。そして、2008年にはこの試験に受からなかった生徒数が3、4%でしたが、2017年には4、5%、昨年は5、5%と不合格者が増えているのが、余り明るくないこの国の教育現状なのです。
そして今年は、その上に標題のような椿事が起ったと報道されました。これは、Abi に出された数学 の問題が難し過ぎたと、試験日の翌日、わたしの住む州の約9000人のAbi 受験生が、教育省に対してオンラインで請願を提出したのです。これに続きブレーメン、バイエルンその他の9州の受験生達も今年のMathe. の筆記試験問題 は難し過ぎたことと、長過ぎて時間切れになったことを訴え、教育省に善処を望むとの陳情をしたとのニュースが報道されたのです。
ここで思い出していただかなければならないのが、この国では教育は各州に権威があるということです。
Abi 問題は、義務問題と選択問題に分けられ、義務問題は州の区別無く全国で同じ問題を解く。選択問題は各州で独自の問題が出題委員会によって作られるのです。
7日の20時のメイン・ニュースの中では、女子生徒のS.さんが「わたしは今まで数学に関しては問題が無かったのですが、Abi. の選択問題は解くことが出来ませんでした。今までに習ったことがないような気もしました。ですからMathe で良い点数をとることは出来ないと思い、残念です」と訴えていました。
またN. 州のある数学教師も、今年の出題問題に関して「わたし自身も、教え方も解き方も難しいと思える問題で、この問題を解くことでその生徒の成績(能力)を計ることには大きな疑問があると思う」との感想を漏らしています。
この他に下記のような批判や、対策などの情報がメデイアを賑わしています。
今回の問題は、授業で教えたこと以上に高度の数学的思考力が要った試験問題となった事から、問題を造る教師の養成が必要である。
ある新聞は、Abi. 試験の問題は各州同一だけではなく、全国一律にすべきだとの
コメントを出していました。これは、昔のこの国では、教育に関しては各州が高権を持って、それぞれ好きなようにしていたことからの思惑なのです。例えば学校制度さえ各州で違っていたので、父親の転勤で違う州に引っ越した子どもが、行く学校が無い、という状態もあったという事からの気遣いなのです。そして、Abi. 試験問題も各学校がそれぞれの異なる問題を出題していたのも、そう昔のことではないのです。これは、バイエルン州の、州同一出題のAbi. 成績が優秀という結果から、改善されて他の州も同一となったのです。この改革がなされたときに、同一問題に良い成績を取るには、マルバツ形式となるので、考える教育には良く無いというコメントがあったのが記憶に残っています。
もう一紙、ベルリンの新聞に、OECD(欧州経済協力機構)の長が、「今回の問題解決には、易しい問題をAbi. に出すことを考えるのではなく、数学の授業法を良くすることが必要だ」「ドイツの学校でのMathe 授業は死んだ授業で、計算処方を
広く、浅く教えるだけであるが、日本の数学授業は教師の出した問題の答えを出すために、生徒全員が取り組む活きた授業だ」と載っているのを読みました。
これ等の反応を読むと複雑な、いろいろなことを学ばされます。OCDE 長の見解は、日独の数学授業法を取り違えているのではないかと思わせられたりもします。実際の授業に無関係の者の云うことかもしれませんが。
強調したいのは「数学の出題問題が難しすぎた」と、教育省に請願をする自己主張勇気なのです。Abi. をとる年齢は18歳前後で、この国の成人年齢の若者達です。生徒でも、一人の人格を持った人間として振る舞い、応対されるということに感心するのです。
N. 州の教育大臣は点数を緩和するか否かは、6月になって全成績を見てから善処するとの答えを出しています。
4月の末から5月の初めにかけてはこの国ではAbiturの季節です。Abitur(以下Abiと略す)とは高校卒業と大学入学資格試験を意味し、日本の大学入学試験に相当するものです。そして、2008年にはこの試験に受からなかった生徒数が3、4%でしたが、2017年には4、5%、昨年は5、5%と不合格者が増えているのが、余り明るくないこの国の教育現状なのです。
そして今年は、その上に標題のような椿事が起ったと報道されました。これは、Abi に出された数学 の問題が難し過ぎたと、試験日の翌日、わたしの住む州の約9000人のAbi 受験生が、教育省に対してオンラインで請願を提出したのです。これに続きブレーメン、バイエルンその他の9州の受験生達も今年のMathe. の筆記試験問題 は難し過ぎたことと、長過ぎて時間切れになったことを訴え、教育省に善処を望むとの陳情をしたとのニュースが報道されたのです。
ここで思い出していただかなければならないのが、この国では教育は各州に権威があるということです。
Abi 問題は、義務問題と選択問題に分けられ、義務問題は州の区別無く全国で同じ問題を解く。選択問題は各州で独自の問題が出題委員会によって作られるのです。
7日の20時のメイン・ニュースの中では、女子生徒のS.さんが「わたしは今まで数学に関しては問題が無かったのですが、Abi. の選択問題は解くことが出来ませんでした。今までに習ったことがないような気もしました。ですからMathe で良い点数をとることは出来ないと思い、残念です」と訴えていました。
またN. 州のある数学教師も、今年の出題問題に関して「わたし自身も、教え方も解き方も難しいと思える問題で、この問題を解くことでその生徒の成績(能力)を計ることには大きな疑問があると思う」との感想を漏らしています。
この他に下記のような批判や、対策などの情報がメデイアを賑わしています。
今回の問題は、授業で教えたこと以上に高度の数学的思考力が要った試験問題となった事から、問題を造る教師の養成が必要である。
ある新聞は、Abi. 試験の問題は各州同一だけではなく、全国一律にすべきだとの
コメントを出していました。これは、昔のこの国では、教育に関しては各州が高権を持って、それぞれ好きなようにしていたことからの思惑なのです。例えば学校制度さえ各州で違っていたので、父親の転勤で違う州に引っ越した子どもが、行く学校が無い、という状態もあったという事からの気遣いなのです。そして、Abi. 試験問題も各学校がそれぞれの異なる問題を出題していたのも、そう昔のことではないのです。これは、バイエルン州の、州同一出題のAbi. 成績が優秀という結果から、改善されて他の州も同一となったのです。この改革がなされたときに、同一問題に良い成績を取るには、マルバツ形式となるので、考える教育には良く無いというコメントがあったのが記憶に残っています。
もう一紙、ベルリンの新聞に、OECD(欧州経済協力機構)の長が、「今回の問題解決には、易しい問題をAbi. に出すことを考えるのではなく、数学の授業法を良くすることが必要だ」「ドイツの学校でのMathe 授業は死んだ授業で、計算処方を
広く、浅く教えるだけであるが、日本の数学授業は教師の出した問題の答えを出すために、生徒全員が取り組む活きた授業だ」と載っているのを読みました。
これ等の反応を読むと複雑な、いろいろなことを学ばされます。OCDE 長の見解は、日独の数学授業法を取り違えているのではないかと思わせられたりもします。実際の授業に無関係の者の云うことかもしれませんが。
強調したいのは「数学の出題問題が難しすぎた」と、教育省に請願をする自己主張勇気なのです。Abi. をとる年齢は18歳前後で、この国の成人年齢の若者達です。生徒でも、一人の人格を持った人間として振る舞い、応対されるということに感心するのです。
N. 州の教育大臣は点数を緩和するか否かは、6月になって全成績を見てから善処するとの答えを出しています。
aokijuku at 01:00│コメント(0)│