2016年06月11日

ビュッケブルグ歳時記 133

ある政治家の暴言


 サッカーが国技のこの国では、今週末からフランスで始まるヨーロッパ選手権大会に、サッカーファンだけではなく、多くの市民がそれぞれナショナルチームに期待を持って応援していることは想像に難くないと思います。そのようなときに難民問題の影響から勢力を増した右翼党 AfD(= ドイツのための選択肢党)の副党首が、ある全国紙のインタビューでチームの一人を取り上げ、評釈したのですが、それへの批判が放出しているのが今のドイツです。
 取り上げられた選手とはジェローム・ボアテングで,彼は肌の色が濃いのです。
ガーナ人の父親とドイツ人の母親を持つことから見かけは黒人ですが、ベルリン生まれで国籍はドイツです。ベルリンで育っているので普通の市民と変わらない学校教育も受けているのです。サッカー才能だけは人より抜き出ていたわけです。また宗教もイスラムではなく、キリスト教信者ということです。サッカーファンの方はご存知だと思いますが異母弟のケヴィンもACミラン所属のサッカー選手です。
 ボアテングは2009年からナショナルチームに属し、デイフェンスが持ち場で、安定した防御技でチームを支えています。時折、キャプテン証を腕に巻いている試合もあります。このことは人間としてもチームを統率する力を持ち、団員が信頼を寄せていることを示していると思われます。


 ここで、どのような暴言評釈かをお知らせしなければなりません。


「ボアテングのような隣人を持ちたいと思う人は居ない」です。


 日本でもヘイトスピーチに関する法規が云々されていると聞きますが、ドイツでも人種差別や外国人憎悪はあってはならないことです。
 このインタービューが公開されるや否や様々な批判が、これも公開されています。「ボアテングやナショナルチームを政治的スローガンに使うのは悪趣味で、
けしからん」「ボアテングはたぐいまれなサッカー選手で、社会的にもいろいろと仕事をしている。若者の手本になるような人である」など。法務大臣も「このような発言は人種差別主義であり人間侮蔑を意味し、この発言は、自身が望まれない隣人だということを示している」と厳しく批判しています。 
 ボアテング選手自身はきわめて冷静にこのコメントを受け止めて、競技に差し支えはないということです。ただしテロ応酬をおそれて家族はミュンヘンに止めるということです。 


 日曜の夜8時半から1時間半のゴールデンアワーはミステリードラマが放映されますが、その後の1時間15分は時事トークショウの時間です。先週は、この暴言政治家とインタービューをしたジャーナリスト、法務大臣その他二人の人種差別専門家がゲストでした。発言者は「ボアテングが黒人だとは知らなかった」など、暴言の色合いを変えようとしていましたが、子どもでも笑ってしまうだろうと思われる、しどろもどろな弁解でした。
 右翼が長大すると市民にとって社会が危険になる可能性が有ると感じました。
そして人種差別を無くそうと働きかけていたボクサーのアリ氏の死を思い出し、彼の願いが叶えばいいと思ったことが、この番組を見終わった時の所感でした。



aokijuku at 00:30│コメント(0)

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
月別の記事一覧
最新コメント