2016年04月09日
ビュッケブルグ歳時記 129
学校での憲法(基本法)教育
この間、一読者から「ドイツでは学校で憲法についての授業が行われるのか、否か」との質問があったのですが、目を覚まされたような気になりになりました。このことは、私が、ドイツでは政治がトランスパレントだと云っている事実を作っている根源の一つだと気付いたからです。ですから今回は学校での憲法授業次第を大まかにお伝えしたいと思います。
この国では8学年から政治授業で基本法(この国では憲法の呼び名が
Grundsatz=基本法とか Verfassung=法的規則など、一定していないのです)について学びます。文章としてだけの法規を、身じかにある”生きたもの”として生徒に感じさせることを目標としています。具体化すると 1.基本法とは何か 2.どのような重要項目で成り立っているか 3.基本法は何故デモクラシーの形なのか 4.この法を国民として守り、保護する理由 を教えるということです。
授業順序は先ず、1「君たちと基本法」として、両者の間隔を狭めることを目的としています。故ワイツエカー大統領の言葉、「我が国には最良の憲法がある。それを守るために我々もまた最良国民であるべく努力するべきではないか」をモットーに、どのような努力が求められるかを暗示し、生徒達にできる小さな政治的社会奉仕をさせるのです。このように自身で行動することによって、文字で読む法規を感覚として身に付けさせようというわけです。憲法授業は体験と並行するべきだ、が教育方針です。
次の段階は、2 の重要項目の「基本的権利」についてです。
第一は「人間の持つ尊厳は、何ものも侵害できない」との「人権」で、これは国民の誰もが法規に触れない範囲で、自由に個人成長を遂げられることが保障されていることを意味します。そのあと、「自由権」で、この中には男女平等を含む「平等」や「信仰と良心に従って行動する自由」、「言論の自由」などが続きます。そして第十二項が軍備についてですが、この項は改正されています。(改正についてはブログ86+87に少し詳しく書きました。念のため)
重要項目の3は「ドイツは法治国である」ことの学習で、この真意は、「憲法は法を作ることで国家権力の悪(乱)用から国民を守る」とあります。現在の法治国とは警察国家に対抗して作られたものだそうです。昔のナチ国家も、旧東ドイツのDDR(ドイツ民主共和国)も法治国ではなかったドイツです。この史実を通して法治国とデモクラシーの密接な繋がりを認知させ、民主主義無しには法治国は在りえず、法治国は民主主義無しには存在出来ないことを生徒に教える。
重要項目4は ドイツが「Sozialstaat」(例のとおり適訳言葉が無いのアルファベトで書きましたが)ということを認識させることです。憲法教育の中では Sozialstaat は soziale Marktwirtschaft =自由(社会)市場経済を意味するとあります。経済生活というものは、市場と競争の上に置かれているもので、この運営に社会を考えに入れない場合は、上下層の落差が大きくなるので避けなければならないことが大切であるが重要点。
以上が学校憲法授業のほんの概要です。12ー13歳の子ども達の頭にどの程度残るかは疑問かもしれませんが、政治を自由に語れる社会の基盤となっているのは否めないと思います。
質問に感謝します。
この間、一読者から「ドイツでは学校で憲法についての授業が行われるのか、否か」との質問があったのですが、目を覚まされたような気になりになりました。このことは、私が、ドイツでは政治がトランスパレントだと云っている事実を作っている根源の一つだと気付いたからです。ですから今回は学校での憲法授業次第を大まかにお伝えしたいと思います。
この国では8学年から政治授業で基本法(この国では憲法の呼び名が
Grundsatz=基本法とか Verfassung=法的規則など、一定していないのです)について学びます。文章としてだけの法規を、身じかにある”生きたもの”として生徒に感じさせることを目標としています。具体化すると 1.基本法とは何か 2.どのような重要項目で成り立っているか 3.基本法は何故デモクラシーの形なのか 4.この法を国民として守り、保護する理由 を教えるということです。
授業順序は先ず、1「君たちと基本法」として、両者の間隔を狭めることを目的としています。故ワイツエカー大統領の言葉、「我が国には最良の憲法がある。それを守るために我々もまた最良国民であるべく努力するべきではないか」をモットーに、どのような努力が求められるかを暗示し、生徒達にできる小さな政治的社会奉仕をさせるのです。このように自身で行動することによって、文字で読む法規を感覚として身に付けさせようというわけです。憲法授業は体験と並行するべきだ、が教育方針です。
次の段階は、2 の重要項目の「基本的権利」についてです。
第一は「人間の持つ尊厳は、何ものも侵害できない」との「人権」で、これは国民の誰もが法規に触れない範囲で、自由に個人成長を遂げられることが保障されていることを意味します。そのあと、「自由権」で、この中には男女平等を含む「平等」や「信仰と良心に従って行動する自由」、「言論の自由」などが続きます。そして第十二項が軍備についてですが、この項は改正されています。(改正についてはブログ86+87に少し詳しく書きました。念のため)
重要項目の3は「ドイツは法治国である」ことの学習で、この真意は、「憲法は法を作ることで国家権力の悪(乱)用から国民を守る」とあります。現在の法治国とは警察国家に対抗して作られたものだそうです。昔のナチ国家も、旧東ドイツのDDR(ドイツ民主共和国)も法治国ではなかったドイツです。この史実を通して法治国とデモクラシーの密接な繋がりを認知させ、民主主義無しには法治国は在りえず、法治国は民主主義無しには存在出来ないことを生徒に教える。
重要項目4は ドイツが「Sozialstaat」(例のとおり適訳言葉が無いのアルファベトで書きましたが)ということを認識させることです。憲法教育の中では Sozialstaat は soziale Marktwirtschaft =自由(社会)市場経済を意味するとあります。経済生活というものは、市場と競争の上に置かれているもので、この運営に社会を考えに入れない場合は、上下層の落差が大きくなるので避けなければならないことが大切であるが重要点。
以上が学校憲法授業のほんの概要です。12ー13歳の子ども達の頭にどの程度残るかは疑問かもしれませんが、政治を自由に語れる社会の基盤となっているのは否めないと思います。
質問に感謝します。
aokijuku at 00:30│コメント(0)│