2015年05月23日
ビュッケブルグ歳時記 109
憲法改正をめぐって
日本と同じ敗戦国ドイツの基本法について学んだ折り、いろいろな思いが出てきました。やはり一番考えさせられたのが憲法をめぐっての両国の現状です。二つの国の基本法を較べることから次のようなことが浮かび上がりました。
日本の憲法には、「政府の行為によって再び戦争の悲惨が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とあり、この軍隊を持たない現行憲法を、国防軍を持てるようにする改正が論議されているのが日本の現況のようです。政府の志向として、隣国、中国や韓国との領土問題を含む摩擦に対する防衛策が必要としての改正に思われます。武器を使って自衛する権利に向かって議論されているのが日本の現状だと思います。
ドイツは敗戦11年後に再軍備をしています。占領後の東と西の国々による冷戦が深刻化したことから、アメリカは、ヨーロッパの中央に位置するドイツを防波堤にして西側の国々を護る作戦案を作り、再軍備を急いだことがこの結果となったようです。
そして1950年にベルギー、ドイツ、フランス、イタリー、ルクセンブルグ、オランダの6カ国が連合した最初の形の欧州統合(EG)という共同体が造られました。この機構の第一の目的が、「経済的に連合することによって軍隊による国々間の葛藤を、今だけでなく将来も除斥する」ことであることは余り知られていないように思われます。経済成長は第2の目的なのです。現在、28カ国を擁するEGは、財政面では多々の問題があり、スムースではありませんが、EG加入国の間では平和が保たれています。この状態はEGが存在する限り持続することで、従ってドイツには戦争懸念はないということです。
日本は隣国との摩擦から戦争懸念が予想され、そのため軍備が必要となり、軍備があるドイツには戦争懸念は今のところ無いという差が何処から来るかと考えてみました。既述の事柄から判るのは、日本は周囲の国々との外交関係がよくないということから、防衛軍が必要になり、ドイツはヨーロッパの他の国々との関係が良いということから平和が保たれているということです。一言で云うと、国と国との関係がよければ戦争は起らない、です。
この考えが正しい場合には、順序として先ず外交関係をよくする努力をするべきです。ここで日本の政府に聞きたいのは、問題のある国との理解交流に人事を尽くしたのか、ということです。この疑問に輪をかけたのが、次の新聞記事です。1988年に紀尾井町に設立され、バブル期以後の困難を日本がどのように乗り切って行くかを見守るドイツ日本研究所の所長の言葉です。「韓国や中国との関係がこれほど悪化しているのに、参院選ではほとんど議論されない。どうして近隣国との関係をよくしようという議論が交わされないのか。国民も政治家も内向きになりすぎているのではないか。欧州9カ国と国境を接するドイツでは考えられないことだ」と、云っています。また「在日韓国・朝鮮人らにぶっ殺せなどとヘイトスピーチを浴びせるデモの広がりが気がかりでならない」とも。
つづく
日本と同じ敗戦国ドイツの基本法について学んだ折り、いろいろな思いが出てきました。やはり一番考えさせられたのが憲法をめぐっての両国の現状です。二つの国の基本法を較べることから次のようなことが浮かび上がりました。
日本の憲法には、「政府の行為によって再び戦争の悲惨が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とあり、この軍隊を持たない現行憲法を、国防軍を持てるようにする改正が論議されているのが日本の現況のようです。政府の志向として、隣国、中国や韓国との領土問題を含む摩擦に対する防衛策が必要としての改正に思われます。武器を使って自衛する権利に向かって議論されているのが日本の現状だと思います。
ドイツは敗戦11年後に再軍備をしています。占領後の東と西の国々による冷戦が深刻化したことから、アメリカは、ヨーロッパの中央に位置するドイツを防波堤にして西側の国々を護る作戦案を作り、再軍備を急いだことがこの結果となったようです。
そして1950年にベルギー、ドイツ、フランス、イタリー、ルクセンブルグ、オランダの6カ国が連合した最初の形の欧州統合(EG)という共同体が造られました。この機構の第一の目的が、「経済的に連合することによって軍隊による国々間の葛藤を、今だけでなく将来も除斥する」ことであることは余り知られていないように思われます。経済成長は第2の目的なのです。現在、28カ国を擁するEGは、財政面では多々の問題があり、スムースではありませんが、EG加入国の間では平和が保たれています。この状態はEGが存在する限り持続することで、従ってドイツには戦争懸念はないということです。
日本は隣国との摩擦から戦争懸念が予想され、そのため軍備が必要となり、軍備があるドイツには戦争懸念は今のところ無いという差が何処から来るかと考えてみました。既述の事柄から判るのは、日本は周囲の国々との外交関係がよくないということから、防衛軍が必要になり、ドイツはヨーロッパの他の国々との関係が良いということから平和が保たれているということです。一言で云うと、国と国との関係がよければ戦争は起らない、です。
この考えが正しい場合には、順序として先ず外交関係をよくする努力をするべきです。ここで日本の政府に聞きたいのは、問題のある国との理解交流に人事を尽くしたのか、ということです。この疑問に輪をかけたのが、次の新聞記事です。1988年に紀尾井町に設立され、バブル期以後の困難を日本がどのように乗り切って行くかを見守るドイツ日本研究所の所長の言葉です。「韓国や中国との関係がこれほど悪化しているのに、参院選ではほとんど議論されない。どうして近隣国との関係をよくしようという議論が交わされないのか。国民も政治家も内向きになりすぎているのではないか。欧州9カ国と国境を接するドイツでは考えられないことだ」と、云っています。また「在日韓国・朝鮮人らにぶっ殺せなどとヘイトスピーチを浴びせるデモの広がりが気がかりでならない」とも。
つづく
aokijuku at 00:05│コメント(0)│