2014年12月27日

ビュッケブルグ歳時記 99

大学生となったレナ6 ー 大学生活が始まるまで


 受けられる条件は1. 決められた学程をこなせると認められる成績証明を持つ者 2. 周囲(配偶者、両親など)の月収が5200ユーロ以下であること、などです。 これ等の条件を満たすと、大学生は30歳まで、マースターコースは35歳まで 毎月、税務署の鑑定によって異なりますが、約465−670ユーロの奨学金を受けることが出来ます。 2016年には7%増額されます。これは2000年からの4年間に上がった消費者価格に相当する額です。このような所にSozialstaat ドイツ国の良い点が見えるように思われます。
 返済は次のようになっています。生徒は返済の必要なしです。学生は半額が補助金額で、後の半分が利息無しの国家貸付金額として返済しなければなりませんが、 
前記のとおり利子無し、期間などのその他の点も事情が考慮されることなど、文字通り厚生事業としての貸付金なので、返済も恐れることはないということです。
 

 これでレナの大学生活は万事整ったと安心していたのですが、引っ越しに数日を残すある日のレッスンに入ってきたレナの顔色を見た時には、またかとはっとさせられました。一難去ったのにもう次の難がきたことが描いてある顔だったのです。
 理由を聞くと、「ベット、勉強机、椅子など、暮らすのに最低必要な家具を運ぶのに、お父さんの車を使えると思っていたのに、使わせてくれないの。貸し車を使えというの。160ユーロとガソリン代がかかるのよ」と、涙まじりに訴えるのです。そしてその復讐として「わたしのビーレフェルトの部屋には親は絶対入れないから」とまるで宣戦布告のように云うのです。わたしも「あなたのお父さん、本当におかしな人ね!」と、つい非難が口をついて出てしまいました。父親の車はコンビで荷物が多く積める車種なのです。レナは17歳で免許*を取ったのですが、一度、後ろから追突された事故があったのですが、彼女に運転させないで父親が自身で運転すれば解決することなのにと思ったからです。娘の大学入学祝いとして、週末の一日の午後を犠牲にしてくれてもよいのにと思ったわけです。ドイツ人の良い性向の一つ、「何事にも徹している」ことも、ここまで来ると行き過ぎだと感じました。娘に、親の方から垣根を作って、隔たりをしているように思われるからです。
 

* 数年前から、ドイツの幾つかの州では「17歳で免許を与えるが、18歳までの1年間は、免許を持っている成人の同席が条件です。 


 これが少女だったレナが大人の一人の女性として大学生になった過程です。彼女にまつわることは困難が多いので、典型的とは云えないのですが、一緒に過ごしてきてわたしも多くのことを学んだように思われます。その中で一番に挙げたいのが、やはりピアノを教えることの意味です。わたしの受けた教えは技術やその他を磨く訓練で、他との比較など全て競争となり、そのためには叱られることばかりで
褒められた記憶がないのです。私がこの地で長い間教えてきたことから得たのは、褒めることから同じ成果が得られる、ということなのです。これは特に児童に向けて云えることです。
 そして、ピアノは上手く弾けるようになることだけが意義ではない。上手い下手には関係なく、弾くことから得るものは人の行く道の支えとなる、ということです。本当に、レナにピアノがあってよかったと思うのです。 つづく


  



aokijuku at 00:05│コメント(0)

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