2014年03月22日
ビュッケブルグ歳時記 81
堕胎
数年前のある日、16歳のアグネスがレッスンに遅れてきました。理由は「妊娠したかと思って医者に行って来たの。そうではなかったのが判って安心しました」でした。話していると、女性にとっては、やはりいろいろな理由で妊娠が問題になる場合が多いと知りました。そこから、キリスト教が国教のこの国での堕胎の実情を調べてみる気になりました。
刑法218条が堕胎に関する条項だということは、この国では市民の殆どが知っていることです。218条には、「中絶は、通常、3年までの自由刑(身体の自由を拘束する刑、即ち監獄行きです)、または罰金刑が下る。着床前の中絶は罪とみなされない」と表明されているのです。この法規で判るとおり、堕胎は今でも根本的には違法なのです。ただし、今は例外箇条が造られました。
次のようなことが、これが造られた過程です。古代から中世まで、中絶には死刑の処罰まであったこの国ですが、60年代に「わたしのお腹は私のもの ー 子どもを生むか生まないかを決めるのは核当する私たち女性 」というスローガンの下に、
1800年代から続いている218条を法規から除去することを目的とした婦人解放運動が行われ、この問題が社会的な討論主題となりました。
70年代には「デモクラシーを浸透させよう」という意図の下に、与、野党の意見が抗争しました。一つは、母親としての人権尊重を、もう一つは、生まれていない子どもの持つ生きる権利を尊重する、と二つの意見に分かれたのです。後者を支持したのはカトリック関係者です。
そのあとも議論が続けられた結果、1976年に次の4つの条件が満たされる場合には、中絶は「違法だが罪にならない」とする例外箇条が加えられた新218条が成り立ったのです。
4つの条件とは:1. 医学上で(健康が妊娠に耐えられない場合など) 2. 優正学上で(遺伝病有りなど) 3. 刑事犯罪学上で(凌辱犠牲者など) 4. 社会生活上で(普通の社会生活をすることが危ぶまれる人など)、難点が認められることが条件です。この条件を満たした上で中絶を希望する者は、決められた相談所に行き、そこで助言をもらうことが必要条件に加わります。勿論、相談所では生まれようとする子どもの生を守ることと、相談者の意志を顧慮することが第一に考えられます。そして、経費や家族との問題など、広い範囲に渡って相談にのるのが妊娠紛争問題相談所なのです。
ドイツでは中絶数が年ごとに減ってきているようです。昨年は約10万件があり、2012年よりも3、8%少なくなっているとのことです。10万件の内の
3/4が18ー34歳の女性で、未成年の堕胎は4%ということです。
アグネスの診断結果が妊娠ではないということで、笑って済ませられましたが、その反対の場合を考えるとやはり考えさせられる問題です。未成年であること、学校教育が終わっていないこと、国教がカトリックのポーランドからの帰住者であることなど、問題は大きくなる一方です。
国の違い、教育の違い、宗教の違い、階層の違いなど、いろいろ考えさせられた出来事でした。
数年前のある日、16歳のアグネスがレッスンに遅れてきました。理由は「妊娠したかと思って医者に行って来たの。そうではなかったのが判って安心しました」でした。話していると、女性にとっては、やはりいろいろな理由で妊娠が問題になる場合が多いと知りました。そこから、キリスト教が国教のこの国での堕胎の実情を調べてみる気になりました。
刑法218条が堕胎に関する条項だということは、この国では市民の殆どが知っていることです。218条には、「中絶は、通常、3年までの自由刑(身体の自由を拘束する刑、即ち監獄行きです)、または罰金刑が下る。着床前の中絶は罪とみなされない」と表明されているのです。この法規で判るとおり、堕胎は今でも根本的には違法なのです。ただし、今は例外箇条が造られました。
次のようなことが、これが造られた過程です。古代から中世まで、中絶には死刑の処罰まであったこの国ですが、60年代に「わたしのお腹は私のもの ー 子どもを生むか生まないかを決めるのは核当する私たち女性 」というスローガンの下に、
1800年代から続いている218条を法規から除去することを目的とした婦人解放運動が行われ、この問題が社会的な討論主題となりました。
70年代には「デモクラシーを浸透させよう」という意図の下に、与、野党の意見が抗争しました。一つは、母親としての人権尊重を、もう一つは、生まれていない子どもの持つ生きる権利を尊重する、と二つの意見に分かれたのです。後者を支持したのはカトリック関係者です。
そのあとも議論が続けられた結果、1976年に次の4つの条件が満たされる場合には、中絶は「違法だが罪にならない」とする例外箇条が加えられた新218条が成り立ったのです。
4つの条件とは:1. 医学上で(健康が妊娠に耐えられない場合など) 2. 優正学上で(遺伝病有りなど) 3. 刑事犯罪学上で(凌辱犠牲者など) 4. 社会生活上で(普通の社会生活をすることが危ぶまれる人など)、難点が認められることが条件です。この条件を満たした上で中絶を希望する者は、決められた相談所に行き、そこで助言をもらうことが必要条件に加わります。勿論、相談所では生まれようとする子どもの生を守ることと、相談者の意志を顧慮することが第一に考えられます。そして、経費や家族との問題など、広い範囲に渡って相談にのるのが妊娠紛争問題相談所なのです。
ドイツでは中絶数が年ごとに減ってきているようです。昨年は約10万件があり、2012年よりも3、8%少なくなっているとのことです。10万件の内の
3/4が18ー34歳の女性で、未成年の堕胎は4%ということです。
アグネスの診断結果が妊娠ではないということで、笑って済ませられましたが、その反対の場合を考えるとやはり考えさせられる問題です。未成年であること、学校教育が終わっていないこと、国教がカトリックのポーランドからの帰住者であることなど、問題は大きくなる一方です。
国の違い、教育の違い、宗教の違い、階層の違いなど、いろいろ考えさせられた出来事でした。
aokijuku at 00:05│コメント(0)│