2012年06月30日

ビュッケブルグ歳時記 39

ゆとり教育万感 3

 先回はプロジェクと授業法の概要を書きましたので,今回は実際の例をお知らせします。


 実施にあたりこの授業法の基本的特色を次にあげてみます。
1. 協力的学習を学ぶために、数人の生徒で一つのグループを形成する。
2. グループごとに、その時点で授業で取り扱われている事の中から、一事項を研究テーマとして選定する。
3. 選定したテーマは、研究過程に学校外(例えば周囲にある企業、官公庁など)からの資料が必要なものであること。
4. 研究終了時にはグループごとに40分のプレゼンテーションを行う。ここでは研究成果の他に、発表技術も評価される。
5. 研究発表の評価(成績点数)は教師と聴講生徒によってなされる。


 ギムナジュウム(高校)10年生の地理の授業です。
* 31名のクラスで8グループを作りました。
* 総合テーマとして「ベルリンの町作りの推移」が決まりました。
* 総合テーマの中からそれぞれのグループは標題を作りました。いくつかの標題をあげてみます。
・ ベルリンの近郊電車の発祥とその発達。
・ ゲルマニア(ナチスが計画していた巨大怪異都市)について。
・ ポツダム広場の建物アンサンブル。
・ パリザー広場。
* 資料を得るために、生徒は関係者との交渉を始めます。
* 期日を決め、現場を見学します。このためには続けての2時間の授業時間(一授業時間は45分)が予定されますが、時間不足の場合には土・日の休日を犠牲にして生徒は集まります。それだけこの学習法に積極的なのです。
* 一テーマに4−6ヶ月(30−40授業時間)が与えられます。


 パリザー広場をテーマとしたグループの研究の一端をハンスの言葉を借りて書いておきます。
{僕たちがこれをテマーにした理由は、2次大戦で破壊される前は                     
この広場がヨーロッパの政治面で重要な位置にあっただけではなく、美的視点からも満点をもらっていた広場で、この美しさを失う事なく再建されようとしていることに注目したからです。例えば
a. ブランデンブルグ塔の両側に再建される建物は塔より高くないこと。
b. 再建される建物の表面はガラスは50%以下にすること。
c. 夜間の死街化を防ぐため20%を居住建物にする。
 このような考慮の基にベルリンの中心地が再建されていることを学び、僕たちは首都の中心地の過去と発展過程から多くのことを学びました}


 このように学ぶことの全部を生徒が自主的に行える授業法は、これまでの向かい合い型とは違って、生徒の学習に対する積極性を促しています。それに、あるプロジェクトを総合的に学習するこの形は、社会人となった時に、経営とか対人関係に有効に使えることのような気がするのですが。ただし、OECD の試験で良い点が取れるのは今でも向き合い型授業です。この二つの形をどのように組み合わせるかがこれからの課題とも思われます。


aokijuku at 00:03│コメント(0)

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
月別の記事一覧
最新コメント