2012年02月26日

お茶碗のもろさと地震――なぜ予知は難しいのか

東日本大震災が私たちに与えた衝撃は忘れることができません。

東北地方太平洋沖では二つの地球規模の大きな岩盤(プレート)が重なりあうようにしてぶつかり合っています。断層と呼ばれる二つの岩盤の境目で破壊が起きたためにこの大地震が発生しました。

お茶碗を低いところから少しずつ高さを増して床に落とすと、ある高さでお茶碗は割れてしまいます。この現象は破壊と呼ばれています。破壊の起こる高さを正確に予知することはできません。
なぜでしょうか。破壊はお茶碗がもともと抱えている小さな、小さな傷(弱いところ)から始まるためです。私たちはお茶碗の全ての傷を知りつくすことはできません。予知することができないのはそのためです。

地震も同じことです。重なり合っている二つの岩盤の境目にある傷(弱いところ)を全て知り尽くすことはできません。ぶつかり合っている力がどんどん大きくなったとき、境目がいつ破断するかを予知することができないのはお茶碗と同じです。

それでは予知は全くできないのかと言うとそうではありません。お茶碗なら、壊れる少し前の高さから落としたときには床にぶつかる音が鈍くなるはずです。もうすぐ割れるぞということになります。
地震の場合も破断が起こる前に岩盤から何らかの兆候が出ているはずです。しかし、たとえ兆候が察知できたとしても破断時刻を何年何月何日何時何分と予測することはできません。これはお茶碗の場合と同様、破壊現象の宿命です。
それでは大きな建物や橋や飛行機に使われている金属材料ではどうか。有り難いことに傷にかかる力が増すと金属材料では傷の周辺部が変形して、傷にかかる力が軽減されます。そのため金属材料は岩石や陶器と違って粘り強いのです。高い建物に居ても安心していられるのはそのためです。

傷にかかる力が拡大される現象は応力集中と呼ばれています。悪いことばかりではありません。お刺身についてくる醤油やワサビの入ったプラスチックの袋には小さな切り込み(傷)がついています。そこを引っ張ると簡単に破れて(破壊して)、口が開きます。切り込みは地震の破壊現象を応用したともいえるのです。科学は意外ですね。


aokijuku at 00:03│コメント(0)

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