2012年01月21日

スペイン体験記 その17

その後、2人でコーヒーを飲みながらひとしきり、スペインの国、制度、国民性を罵倒してみましたが、何の解決もしません・・・。

試験に合格して勉強できないという想像もしていなかった現実に私達は怒りとも悲しみともいえない複雑な気持ちでいました。
ルーマニアの彼は音楽院に合格した証明書ではなく、入学しますよという証明書がなければ自国に帰ってもビザが取得できないし、戻ったらいつまたスペインに来られるか分からない。と、事態は私より一層、厳しいものでした。
その点、スペインに滞在するという点では私の場合、まだ何とかなる状況でした。

その後、なす術が無いのでとりあえず、彼とはそこで別れました。
その時点では“また会おうな!”と、ガッチリ握手をかわしたのですが、その後、彼とは会う機会がありませんでした・・・。

私もどうしたものかと、帰り道、頭を悩ませていました。
この時点まですっかり頭の中から落ちていましたが、この編入試験に備えるため、プライベートでソルフェージュを勉強していました。チェロ先生という女性の先生です。旦那さんとは別れ、4人の娘さんを育てている、まさしくおっかさんというとても素敵な先生でした。
早速、電話をかけて試験の結果、状況を伝えると、チェロ先生も驚いていました。

その後、よくあったことですが、スペインではスペイン人自身、理解に苦しむことやシステムはままあることで、考えてみればこの日本でもあることです。が、当時の私にはこうした事態も初体験でチェロ先生には藁をもすがる思いで何とかならないかという相談をしました。

チェロ先生は快く相談に乗ってくれ、“色々と心当たりに聞いてみるわ”と、電話を切りました。チェロ先生からの連絡は意外にも早く、“あたしの知り合いが、別の音楽院にいるんだけど、そこでギターを教えてくれるわよ!先生はホセ マヌエルっていうの!“と、電話の向こうからは“よかったわね〜あんた!!”と、祝福してくれているのがよく分かる声でした。
私も嬉しさで一杯でしたが、一方ではこんなにあっさりと事が運んでいる事に対してやや懐疑的でした。

“まだ、入学手続きをするまではわからない、スペインは恐ろしい国だ。”と、嬉しくて仕方がないことなのに気を許していない自分がどこかにいました。
しかし、あらゆる人脈を辿ってこんなに良い知らせをくれたチェロ先生には感謝してもしきれません。何か形にしたいと思い、食事に誘うと、逆に招待してくれて本当にお世話になった方です。

思えば、チェロ先生との出会いは新聞の広告欄からでした。
たくさんいるソルフェージュの先生からチェロ先生を選んだのは本当に運がよかったとしかいえません。

そんな訳で今度はホセ マヌエルと今後、奇妙な縁で結ばれることになりました。



aokijuku at 00:03│コメント(0)

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