2010年10月17日
「He is crazy!」
「He is crazy!」
金曜日の昼に食べ放題になるシェーキーズでピザをほお張りながら、トムは、デニーをそう評しました。「クレージー?」半年前にアメリカに来たばかりの我が身にとって、クレージーとは、今は差別用語になった「気違いである」と同義語でした。「デニーは気が狂っているのか?」一瞬、訳が判らなくなったのです。そう言えば、いやにどうでもいいことにこだわるタイプの人間であることは確かだ。日本から来た技術者が、一人残らず「デニーは困ったものだ。」と悪口みたいな泣き言を言うのを耳にするにつけ、「気違い」であるという評価も間違いがないかもしれないと思いました。
デニーとは、特許がはるか前に切れたにも拘らず、今も主力商品で有り続ける画期的な商品を開発した、以前勤めていた会社で最大の功労者と言ってもいいくらいの、イギリス系アメリカ人の現地法人社長でした。現地法人と言っても、当時は従業員数10数人しかいませんでしたが、今でも珍しい商品開発だけのために設立されたR&D専門会社でした。
私が派遣される2年ほど前に、ニューヨーク州のバッハロー郊外にあった工場の片隅で、日本から技術導入の打合せに来た創業社長に、「おれのアイデアを聞いてほしい!」と、アプローチしてきたのが、このデニーだったのです。そこの会社では、技術顧問の肩書きであったのですが、誰も自分のアイデアを見向きもしないので、そのアイデアを実現してくれるかも知れないと、初対面の東洋人に話を切り出したのです。
「動物的カンがある。」と評された創業者は、何の実績も、評判もないデニーのアイデアを聞くと、直ぐにそのアイデアが世間の常識を覆すものであることと理解したようです。嫌がる本社での開発の代わりに、幾らかでも日本に近いシアトルに、設計や試作のための開発拠点を設けたのでした。
私が赴任したときには、当初の画期的なアイデアに基づく機械の開発が終わり、次の商品に取り掛かっていました。画期的な機械は、日本で様々な改良を加えたせいもあり、市場に大きな反響を呼び、それこそ爆発的に売れ出していました。そんなこともあり、次なる商品の開発にも期待がかかっていたのです、とは言え、アイデアは、長い睡眠時間が必要なようです。デニーにとって、今までの得意分野と違ってもいたこともあるのでしょう。アイデアとしては面白いが、まるで物にならない、商品にならないものばかりが出てきました。「それから、それへと出る訳ないよ。素晴らしいアイデアなんて一生にひとつあればいいよ。」それが一般的従業員の評価でした。
そんな中で、機械の組立工として、デニーと一緒に転職してきたトムは、自分を小僧のように扱うデニーを畏怖していたと同時に、発明家としてのデニーを尊敬もしていたのです。シェーキーズでの話は、如何にデニーが人と違っているのか、自分の道をそれこそ他人を構わずに、歩んでいるかということだったのです。「人と違っているんだ。変わっているんだ。そのために、大発明をしたんだ。」それが彼の言いたいことだったのです。
金曜日の昼に食べ放題になるシェーキーズでピザをほお張りながら、トムは、デニーをそう評しました。「クレージー?」半年前にアメリカに来たばかりの我が身にとって、クレージーとは、今は差別用語になった「気違いである」と同義語でした。「デニーは気が狂っているのか?」一瞬、訳が判らなくなったのです。そう言えば、いやにどうでもいいことにこだわるタイプの人間であることは確かだ。日本から来た技術者が、一人残らず「デニーは困ったものだ。」と悪口みたいな泣き言を言うのを耳にするにつけ、「気違い」であるという評価も間違いがないかもしれないと思いました。
デニーとは、特許がはるか前に切れたにも拘らず、今も主力商品で有り続ける画期的な商品を開発した、以前勤めていた会社で最大の功労者と言ってもいいくらいの、イギリス系アメリカ人の現地法人社長でした。現地法人と言っても、当時は従業員数10数人しかいませんでしたが、今でも珍しい商品開発だけのために設立されたR&D専門会社でした。
私が派遣される2年ほど前に、ニューヨーク州のバッハロー郊外にあった工場の片隅で、日本から技術導入の打合せに来た創業社長に、「おれのアイデアを聞いてほしい!」と、アプローチしてきたのが、このデニーだったのです。そこの会社では、技術顧問の肩書きであったのですが、誰も自分のアイデアを見向きもしないので、そのアイデアを実現してくれるかも知れないと、初対面の東洋人に話を切り出したのです。
「動物的カンがある。」と評された創業者は、何の実績も、評判もないデニーのアイデアを聞くと、直ぐにそのアイデアが世間の常識を覆すものであることと理解したようです。嫌がる本社での開発の代わりに、幾らかでも日本に近いシアトルに、設計や試作のための開発拠点を設けたのでした。
私が赴任したときには、当初の画期的なアイデアに基づく機械の開発が終わり、次の商品に取り掛かっていました。画期的な機械は、日本で様々な改良を加えたせいもあり、市場に大きな反響を呼び、それこそ爆発的に売れ出していました。そんなこともあり、次なる商品の開発にも期待がかかっていたのです、とは言え、アイデアは、長い睡眠時間が必要なようです。デニーにとって、今までの得意分野と違ってもいたこともあるのでしょう。アイデアとしては面白いが、まるで物にならない、商品にならないものばかりが出てきました。「それから、それへと出る訳ないよ。素晴らしいアイデアなんて一生にひとつあればいいよ。」それが一般的従業員の評価でした。
そんな中で、機械の組立工として、デニーと一緒に転職してきたトムは、自分を小僧のように扱うデニーを畏怖していたと同時に、発明家としてのデニーを尊敬もしていたのです。シェーキーズでの話は、如何にデニーが人と違っているのか、自分の道をそれこそ他人を構わずに、歩んでいるかということだったのです。「人と違っているんだ。変わっているんだ。そのために、大発明をしたんだ。」それが彼の言いたいことだったのです。
aokijuku at 00:05│コメント(0)│