イク・リスマン

2023年12月09日

ビュッケブルグ歳時記 310

Karlsruher 裁判官達の持つ大きな権力!


 Blog309で2024年の国家予算成立の行方が危ぶまれていることをお知らせしましたが、今回は来年の予算を持てないとの判決を下したこの国の連邦憲法裁判所の持つ大きな力と、裁判所が現在検討している政府の、又は政治家の諸々の疑問点についてお伝えしてみます。


 先立って、連邦憲法裁判所とは16人の裁判官(半分は連邦議会、半分は連邦参議院により選出され、12年の任期を持つ)によるこの国の憲法裁判所です。

 裁判所と聞くと「人間の犯した罪を裁判する所」と思ってしまいますが、憲法裁判所は罪を裁判するのではなくて、「政府がこの国の憲法に沿った仕事をしているか」を検討する裁判所なわけです。 


 この裁判所で現在、検討されている問題とは、 

* ショルツ首相と銀行問題
 これは首相個人の問題で、彼が首相になる前にハンブルグ(はベルリンと同じように市が州に見なされる)の市長をしていた時に、W. 銀行との間で行われたと言われる財政と税金政策の Cumーex スキャンダルの真相。
 判決が出て不正事件があったとされることになっても、その詳細とか刑に関することはこの裁判所では降りないわけです。

* 暖房法規
 この法規についてはSPD( 社会民主党 )と CDU /CSU, FDP( 自由民主党)が長い間争っていたのだが、この法規を作るには時間が必要だというCDU党の意見がこの裁判によって決まって、今もその時が来るのを待っている。

* 再度の選挙法改革
 アンペル連合党の要求で新しくされた選挙法について抗議する告訴が出ている。この案は連邦議会を小さくするという案で、この案は左翼とバイエルン地方のCSUから出されたもので、裁判所の判決が待たれている。

* 連邦政府への質問
 内務省のF 氏の「アンペルl連合党は言われた期限を守らなかったが、それに対する対する処置は」という問いに対しての裁判所の答えは 「14日間というのは仕事の忙しい時には守れる期間ではない」との判決を明らかにしという判決が読めます。

* 2021年のベルリン選挙での混乱
 選挙用紙の不足、選挙までの長い待ち時間、決められた選挙時間を過ぎてからの選挙、もっと酷かったのは選挙所の扉が閉まった後の選挙で、CDU /CSU は選挙をやり直したいと訴えているが、この判決は12月19日に下りる予定。


 ベレー帽を少し硬い形にした帽子も、長いゆったりしたローブも深紅、そこへ太いネクタイ状の白いマフラーで襟すじを彩っている老若男女の、この国最高の憲法裁判官達の写真からは、この国と国民を守ってくれるような雰囲気が見えるような気がするのですが。

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2023年11月25日

ビュッケブルグ歳時記 309

来年の国家予算決定を定かにできない今のドイツ


 ドイツ政府は、来週、2024年の国家予算を決める予定になっていたのですが、15日に連邦憲法裁判所から「Ampel連合党は2021年の追加予算の件で基本法則に違反した」との判決がおりたため、12月1日に予定されていた国家予算計画日を不定期間延期すると発表しました。


 国家予算が立たないことはこの国の未来に大きな損害 が予想されています。

 それはさておき、今回は原因となった追加予算に関する裁判がどのような裁判でそれに続く判決がどのようなものであったかをお伝えしてみます。


* 2021年の予算計画で、コロナ・パンデミーの終局対策として60Milliarde が許可されたが、この金額は使われずにおいてあった。
 それをAmpel 連合党は今年の国家予算に入れて KlimafondsとかTransformationsfonds とかに使っていた。

* このAmpel 連合党の予算の扱い方には扱い方だけではなく多々、不当な点がある。
1、上記のKlimafonds に使う理由が明確ではない。
2、Ampel 連合党は、地球温暖化を防御する政治はその国の企業の好転にも関係すると言っているが、これだけの説明ではなんの役にも立たない。


 このようなことはさておき、規則に背いている第一は、前期のための予算を今期に回すことは不法であるということです。
 このことを2022年に野党のCDU /CSUが告訴して、Ampel連合党の前期の予算についての扱い方が正しくなかったことが、2024年の国家予算を決議する今になって判明したというわけです。

 そして2023年11月15日に、連邦憲法裁判所が「Ampel連合党の追加予算の扱い方は違憲である」との判決を下したのです。


 そしてこの判決の結果は、大きな経済的負担となってAmpel連合のこれからの経済問題となっているわけです。使えなくなった60Milliarde をどのようにして補うかです。
 それだけならまだいいが、経営企業界を 活発にするための 200Milliarden ー fonds も忘れてはならないことである、とも言われています。


 そして一方では E-稼働性、水素化学者、地方団体における暖房方式などへの費用は節約されるのでこの面では発展も進歩も期待できないとの失望の声も大きく聞こえる今のドイツです。

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2023年11月11日

ビュッケブルグ歳時記 308

ショルツ首相の半年首相業務の結果は・・・


 このような標題の下で首相と記者との問答が新聞に載りましましたので、その模様をお伝えしてみます。


*問:首相業2年目の今、どのような教訓を得ましたか。

 返答:アンペル連合の元でドイツは様々の困難を克服したと思う。例えば液体ガスを気体ガスにするターミナル建設を成功に導いたし、さまざまな企業を Klimaneutralitaet(環境に沿った)にすることにも精を出している。


*問:最近、我が国だけではなくヨーロッパに多く流れ込んでくる異住民の問題の解決は?

 返答:この国に流れ込んでくる移民だけではなく、ヨーロッパに流れこんでくる不正規の異住民をストップすることは自国だけで解決できることではなく、他の国との協力と団結が必要である。そのための政案は、長い間眠っていたのだが、この夏の欧州移住民洪水に再考することになった。
 この政策とは、外部からEU圏に流れ込んでくる異住民をEU圏に入る前の地で分別し、移住民としての資格を与え、この資格を持つ人だけをEU圏の国々に送り込む、という政策である。今まではドイツに来る異住民の70%は、移民として資格を持たない人達であったのだ。


*問:この案がEU圏の賛意を得るまでにはまだ期間がかかると思われるが、それまでの解決策は?

 返答:その前に言っておかなければならないのは、ドイツを目指してくる移住民の数は多すぎるということである。この解決にはオーストリア、スイスの両国とに協力を求めている。


*問:移民問題は我が国の社会的問題になるほど大きな問題なのか。

 返答:我が国の国民は不正規な移民と、知性や技術を持つ労働力を持つ移民との区別があることを知っている。またドイツはこれから先、今の豊富な社会を保つためには、多数の優秀な技術者を必要としているのである。
 そこから、技術を持っている移民と、ただの移民との差があるわけで、ただの移民には滞在権利は与えられず、強制帰国となるわけである。ただし、政治的迫害が予想される場合はまた別に検討される。


*問:最低賃金について。役所は2024年1月から12、41ユーロ、2025年からは12、82ユーロと発表したが。

 返答:自分としてもがっかりした。原因は雇用者が勝手に決めた額で、社会的精神を持つ団体の決めた額ではないと思う。


*問:ウクライナ戦争の関することとして、何故 Taurus-Marschflugkoerper をキエフに送れないかの原因は?

 返答:まず、ウクライナへの武器応援は、ドイツは米国に次いで多くの武器を応援している。闘争戦車、大砲、弾薬など。
 そして自分としてはこの戦争がロシアとNato間の戦争にならないことを切に願っている!


 ここにご紹介した問いと返答は全体の約3分の1ぐらいなのですが、それでも首相の考えをお分かりいただけると思います。
 
 長く続いたCDU,CSU の政治の後のアンペル連合党の政治に期待を寄せながら・・・

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2023年10月28日

ビュッケブルグ歳時記 307

女性の社会進出


 民主主義の国々では人権を重んじ、その中には男女の同権が薦められている現在だと思われますが、日本での男女同権はドイツに比べて相当遅れているように思われます。
 この国の国会の写真を見ると、地味な暗色の背広と同じくらいの女性服が見られ、女性議員の進出が多いと思われるのです。

 このような時代に、先週フランクフルトで行われた、世界最大と言われる IG Metall労働組合の組合長選出の選挙で 96%の賛意を得て55歳の Christiane Benner さんが選出されたのです。女性組合長選出は組合創設132年以来のことということです。


 エネルギーが工業国の最大の問題になっている今、この役についた彼女の抱負や計画をお知らせしてみます。

* 彼女の学歴は社会学を学んだ後、アメリカに渡りBacheler(学士)をとった後、フランクフルトのゲーテ大学卒業証明書を得た後、1997年に組合に入り、今年までの最後の8年間は副会長を務めたということです。

* 「組合長となることはとても嬉しいこと。これからの仕事はインダストリーを Klimaneutral ( Klima は気候、風土、neutral は中立ということだと思うのですがインダストリーと合わせると、風土と合致したとでも訳するのがいいのか、わからないのです。申し訳ありません!)とすることが第一の仕事である。そしてこれは会社と労働者が一体にならなければ出来ないことなのである。

* この問題の第1として、現在この国の金属工業が電気代の高いことで窮地に陥っているのだがその解決策として、政府の計画 ”みどりのエネルギー” になる2030年までは橋をかけるような気持ちで、その時々にあった電気代を支払う様式をとって行きたい。

* またIGMetallは大企業だけではなく小中企業や鍛冶屋を重要視し、創設や賃金についての手伝いを惜しまない。

* 新しい組合員を増やす策としては「1週間32時間労働」を第一に掲げる。この策は現在パートタイムで働いている若者や女性労働者に魅力を持たせるだろう。

* またドイツの電気自動車購買の報奨金受け取り期間が短か過ぎると思われるし、充電装置の装備にも不満があるので、ここの解決にも力を惜しまない」


 ここに挙げた事項はほんの僅かで満たない事項だと思われますが、このような改革が工業国ドイツの組合、長が女性の組合から実現される可能性を考えると、民主主義の発展、女性の地位の発展を願うのはわたしだけではないと思われます。

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2023年10月14日

ビュッケブルグ歳時記 306

教師教育について


 しっかりした地球温暖化への対策もなく、ウクライナ戦争の終焉も見えず、産業発展の未来も暗い、発展国への、未発展の国からの避難民が多いなど、気が滅入るニュースの多いこの頃に、またイスラエルとハマスの争いが起こったという本当にガッカリする世情の今日この頃です。

 このような状態の世界で極極小の市民のわたしに出来ることは砂粒より小さいものなのですが、新しいことを知ることには何かの益もあるかと思われるのでドイツのこの頃の世情をお伝えしてみます。


 この国では秋が新学期です。この頃の新聞に「最近の新学期の始まり授業は、”Quereinsteiger” によるものが多い」とあるのです。この Quereinsteiger という意味は”横から入って来た人”という意味で、本当の教師の資格を持っていない人、という意味なのです。

 ドイツでは昔は牧師と市長と教師が村のいわゆる上級インテリ層だったのです。今でも Gymnasium(高校) の教師の地位は相当に高いのです。そういう社会で正規の資格のない人が教壇に立つということは、教師の数が少ないことや、移民の子供たちが多いことから生徒の数が増えていることが原因かと思われます。

 こんな状況の中で、5年間の教職大学での勉学の中に、日本にはない(と思われる)ある段階があることに気づいたのです。
 ”Referendarzeit“ ー 試補見習(第1次の国家試験に合格し、Assessor になるための見習い期間)と辞書にあります ー と呼ばれる”試補見習機会”がついているのです。この期間がついているのは教職大学の他に法科だけだと思います。この期間についての少し詳しいことは次のとおりです。

* 期間は18−24ヶ月。この国では教育は州の担当なのでこのように異なる。

* 臨時聴講2−6ヶ月。教師の授業を観察する期間。

* 次の段階は自分が教師となって授業を行う。

* この後は教師としての役目 ー 授業内容を組み立て、試験問題を作成し、採点もする。

* そして最後にこの試験に合格することは第二時国家試験合格と同じようにみなされる。

 このような実習教授法は日本にはないように思われましたので簡単にお知らせしてみました。


 今年の新学期には全国で709000の教師のうち60800人が正式な資格を持たない教師として教壇に立つ結果になったと、この国の教師教育の衰退を嘆くという、この国にとってはここもまた望みの少ない事態のように思えます。
 他の事柄を勉強した人々の教授法が良い方向に向かうことを願いつつ・・・

aokijuku at 00:30|この記事のみを表示コメント(0)
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