2020年06月27日

ビュッケブルグ歳時記 229

新しい法規、Antidiskriminierung


 日本にも報道されたと思われるアメリカで起こった警察官による黒人殺人事件は、この国に大きな波乱を巻き起こし、コロナの残した残骸処理に追い討ちをかけるように国内の安全を脅かすような事件が続く2020年6月のこの地の近況をお伝えしてみます。


 ドイツでは、今だに第2次世界大戦でのナチスによる民族純血主義に伴う非行が影を残しているため、 Rassismus (人種差別主義)には、どんな場合にでも非常に敏感な反応を示し、この主義の駆逐に励むのがこの国の課題です。
 今回のアメリカでの事件は、被害者が黒人であったということと、 犯罪 人が警察官であったということで、人種差別と国家安全機関の警察制度という二つのテーマが、この国の政治に大きな影響を与えたように思われるこの頃なのです。

 米國の事件の後は、ドイツの数都市ではRassismus 反対の大きなデモが行われ、この国の国際友好が叫ばれていました。ただ、新聞、雑誌、TVなどのメデイアでは時折、肌の色の違う学生や、宗教の違う人や難民として入国した人々が、自分たちが置かれている本当の世相状態を告白するニュースも多々、目に入ったこともお伝えしておきます。

 このような時、6月4日に都市州のベルリンの議会で、表題Antidiskriminierung と銘打つ法規が可決されたのです。この法規の意味は、 Anti は反対とか否定という意味を持ち、Diskriminierung は人種、差別などによって不利になるような差別をすることを意味します。差別待遇禁止法律です。ですから今まで警官が、外国人や、自国人でも挙動に不審のある場合には、そのような不審点を持つ市民に対して排斥挙動をしていたことを禁止する法律が作られたわけです。 LADG と呼ばれるばこの法規はドイツで初めての形で、人種差別だけではなく階層による差別とか慢性不具者に対する挙動も含まれている、警察官への自重を促す法律なわけです。そしてこれを差別されたと思う側から見ると、市民という共同体を守る法律であり、組織上の機構に対する権利を持つことを意味するという解釈もできるわけです。
 警察官から侮蔑対応をされたと思う市民は裁判に訴えることができ、訴えが通った時には相応の見舞金というか賠償金が受け取れるということです。 


 遅れてしまいましたが、ドイツでは警察機関は、教育機構と同じように各州が全権を持つ州行政なのです。これだけが原因ではないかもしれませんが、この法規に対する各州からの賛否意見は様々で、バイエルン州からは以後、ベルリン警戒のための派遣警官送付(首都ベルリンでの外国からの来客安全装備の時とか、大規模なデモ警備には、ベルリンの警察官だけでは不足なので、他の州から多くの警官が援助のために派遣される)はしないなどと強硬な態度の州も多くあるようです。
 そしてアメリカの警察官は1年間の教育、ドイツの警察官は3年の教育期間であると優劣を云々したりすることと、警察機構の成績をコントロール(試験する)機関はドイツにもフランスにも無いが、英国では Indipendent Office for Conduct という民間の組織があり、警察仕事をコントロールしている。この国でも見本としてこのような機構を作るべきだという建設的な意見が目に止まりました。


 このような問題で混沌としている時、6月20日の夜、南のB.W州の首都シュトットガルトで、500名の21歳以下の若者による暴動が起こったのです。
この州は知的階層が多く、世界に開けた平和州として通っているところでの暴動には国全体があっけに取られたという状態なのです。Video に移された暴動群れの警官に対する暴力を見ると、上記の志向の反対を行っていることがわかり、どう考えて良いのか混沌としてしまうのです。
 コロナ騒ぎのため、スポーツクラブやトレーニングセンターなどが使えないことから、若者たちが溜まっていたネルギーを憤怒や攻撃力として発散した事件で、政治的理由は見られないとのことがせめてもの慰めですが、このようなことは法治國にはあってはならないことであるとして、24名の逮捕者、負傷警官19人という事件の行為者には重い刑罰を与えると報道されています。


 世相が、このように混沌としている今のドイツです。




aokijuku at 00:30│コメント(0)

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