2019年07月13日

ビュッケブルグ歳時記 206

パラグラフ([法規の]条)219a

 今回はまず標題の解明から始めなければなりません。
 218条は、この国の成人市民の大半が知っている条で、連邦刑法典にある妊娠中絶に関する条です。219aはそれの関係刑法条で、先月の半ばに、この条に起った変化が今、ニュースになっているのです。

 起った変化のきっかけとなったのは、2年前に、一女性 医師(H.氏)が彼女のホームページに、中絶についての一般注意事項などや、質問にはE-メールで答えるとの旨を載せた所、これは彼女自身の宣伝コマーシャルになり、自己の産を増やすことに繋がる。そしてこのような広告は、医師法では禁止されているとして、
6000ユーロの罰金判決を受けたのです。
 しかしこの判決に対して、中絶に関しては、施行医者と普通の医師の自己表示(患者に対してのコミュニケーションや商化など)とを同様に扱ってはならないとの意見が強くなり、今年の3月に、刑法219a の一部が、次のように変えられたのです。
 「中絶を実施する個人医師、又は病院はそのことを公表してよい。ただし、その方法や誘導などの詳細公表は禁止」と変わったのです。

 ここから、H. 医師は無罪になったのですが、このような形の変化は、インターネット上の規約を変えただけの見かけだけの変化であって、生む事と中絶の間で苦悩している女性達にはなんの助けにもならないとして、H. 医師はインターネット上で、妊娠している女性達の助けになる方法のために、実のある法が認められる迄、闘うつもりだとの意見を強くしているとのことです。
 
 ここで、キリスト教が基礎になっているドイツの堕胎について簡単に書いてみます。
 堕胎法はナチスが政権をとった直後の1933年に、ナチ国家がその刑法典に「堕胎は刑を受けるべき行為である」と記したことが元だということです。
 そして旧東では、当時この規定は進歩的で過激な良い規定と扱われていたようです。それに比べ、旧西では刑とするべきか否かが議論されはじめていたにもかかわらず、今でも218条は処罰の中に入っているのです。が、個人の自由が認められる国としてのドイツでは中絶は ”事情に寄っては”(”条件を満たせば” などが適当なのかもしれませんが法律用語を知りませんのでお許し下さい)刑罰にはなりません。
 ”事情” とは、大まかに書き出すと、妊婦自身の希望であること。施行は受胎から12週間以内であること。執行3日前までに国家認証の相談所で話し合いを受けたこと。が”事情”として挙げられています。これ等を満たしていれば中絶を受けられるわけです。

 今回のH. 医師の判決がきっかけとなって、国も中絶者への思いやりのある扱い方などを考えているようですが、例えば、施行医者のリストを作り、連邦医師協会がそれの管理をし、相談者に示すなどの、これらの政策実行は容易ではないようです。このことは今期の家庭大臣が指摘している、毎年約76000人が中絶しているにも関わらず、記録数は2003年には2000件、2017年には1200件と減少していることに現れているようです。中絶を相談する、信頼できる医者が少なくなっていることの表れで、隠れた中絶が多いようです。

 5月半ばの新聞にはアメリカの、カトリックの力が強いアラバマ州では中絶は拘留の罪になるという記事がありました。カトリック国ポーランドも、ヨーロッパ一番の厳しい規定を持っています。暴行の結果の妊娠、妊婦の生命が危ぶまれる場合、生まれる子が重病の場合以外は中絶は認められないということです。ヨーロッパ中で一番の自由主義のオランダでは、施行は受胎後24週間以内という期間原則以外は規定が無いということです。
 
 このように生まれて来るーー来たい子どもへの待遇も、国によって様々な事がわかります。正しい道は何処かという声が止むこと無く聞えるように思えます。




aokijuku at 00:30│コメント(0)

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
月別の記事一覧
最新コメント