2019年06月22日

ビュッケブルグ歳時記 205

動物ーー ハチとの問題


 2ー3年前から、高速道路を走った後の車の掃除が手軽くなったという現象はこの国の全てのドライバーがもつ印象だと思います。

 何が軽くなったかというと、目的地に着いた後、フロントグラスを透明に磨き上げる必要がなくなったのです。昔は、左右に拓けた田園の中や、鬱蒼とした森の中のアウト・バーンを時速100キロ以上で走った後は、フロントガラスが大小の昆虫の死骸で、なにかの糊でも塗ったようにとても汚されたのです。ある地域では、特に夜間走行中には水を出してワイパーを使ってきれいにしないと前方の安全が保てないというほどの汚れかただったのです。それが今では、ガラス掃除が不必要となったのです。

 昆虫が居なくなってしまったのです!

 2ー3年前から、昆虫退治のためのFipronil とか Neonikotinoid とかの難しい名前の化学薬剤の使用を禁止するとかしないとかのニュースがよく流れていたのですが、人間の食料となる農産物をもっと良く育てるために使われるこれ等の化学駆虫剤の効果がこのような所に大きく出ているのです。

 この消えつつある昆虫の中にBiene=蜂も入ります。Biene を辞書で引くとみつばち と出ているのですが、この国の人はみつばちだけではなく野生蜂など蜂を総合してハチと呼び、この昆虫を大切に扱い、そしてハチは多くの市民のアイドルとなっているのです。

 ハチは植物が実を付けるために花粉の運びをしている大切な生き物として、存在を再認識することがこの2ー3年重要視されています。ある店では、ある一日、数種の果物を棚から消して、ハチだけではなくスズメバチや甲虫、蝶々などが居なくなるとリンゴやコーヒーやチョコレートやオレンジジユースも無くなってしまうと子ども達を中心に自然界の原理を示したりしています。
 また大手のスーパーがハチを中心にした昆虫のための広大な花畑を造ったり、あるスーパーは自然(bio=ビオ)農場で飼った牛からのミルクをビオ・ミルクとして売り出したりしています。
 また62歳のシルビアさんは、街中の空き地とか空き工場などを、その筋元と交渉してハチの好きな花畑にする組織を作り上げ、同時にハチの寄って来る花の種を全国へ広めることを務めているようです。
 このような所行には、平和的締結として公の所からの認意援助もあるようです。

 また Imker と呼ばれる養蜂者も増えているようです。
 54歳のヤンさんは "Bee-Rent" という名の”ハチ貸し” 業を始め、貸したハチの養育法から 造られた蜂蜜の販売法までの指導をしているという記事も読みました。


 そしてこの間から、自分の家を持っている人達は庭の造り方を、ハチが好んで来るような方式にすることを勧める奨励文をよく見かけます。わたしの住んでいる小都市は、お城を中心に静かで落ち着いていることから老人の数が多くなって隠遁者都市となりつつあるのですが、それに伴って住まいにしても、花畑の手入れの煩わしさを省くため、砂利を敷くというふうになるとハチの数は減るとの配慮があるような感じです。そういえば、昨年秋には家々の大きな樹が軒並みに伐採されていたことに驚いたのを思い出します。老人には落ち葉掃きも大仕事なのです。
 若い人達の家もクールな石造りになるとこれもハチの住まいにはそぐわないと思われます。
    

 人間の食物生産と自然界との葛藤。昆虫、特にハチの数を増やす努力をしているドイツです。


aokijuku at 11:04│コメント(0)

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