2019年04月13日

ビュッケブルグ歳時記 200

臓器提供をめぐって

 4月になっての連邦議会での第一論争テーマは、健康大臣提出の臓器提供についてで、臓器提供規則を新たにするというものです。
 臓器提供は死にまつわり、それに続く移植は生を意味することで、人の生死に関わる重い問題です。そして新たになる規則は、「反論しない者以外は、全員を提供者とみなす」というもので、ドイツ語では「Widerspruchsloesung」といいます。
この意味は、「反論解決策」で、抗弁しない限り、国民全員を提供者と見なすとするものである事から、心ある市民は考えざるをえないということになり、メデイアも個人の間でも、このことについて議論されているのがこのところのドイツなのです。 

 このような、ある意味では人民の選択権を犯すような規則を施行しようとするのは、2010年には11%の移植で生き延びた患者が記録されていたのが、年々減って、現在約1万人の患者が移植を待っているのに、提供者が少ないことでこの内の2千人が移植前に死亡する状況にあることがあげられています。

 また、この状況を煽ったのは2015年にあった移植スキャンダルと呼ばれる事件があるのです。これは、ある地方の病院で提供された臓器を、適当と思われていた患者以外の患者に移植した事の良否が問われ、地方の裁判では執刀医者が有罪と見なされ、禁固刑に職業権剥奪の刑を受けたのです。その後、大学病院でも移植の是非が問われることもあり、連邦最高裁判所では無罪判決となったこともあり、この後、提供患者も執刀医者も臓器移植に心配感がつきまとうということになり、提供者減少になっているとも云われています。

 また、提供者の出る病院と、移植全般を司るDSO(ドイツ臓器移植運営機関)との連絡がスムースに行かない事とか、費用の問題も解決されるべきこととしてあげられています。
 これ等の問題を解消する目的で出されたのが「反論解決策」なのです。 

 この新規則についての説明を書き写してみます。
 新規則「反対者意外は提供者とみなす」の意味は、生きている間に、反対意見を表明しない限り、自動的に提供者と見なされるわけで、今迄のように提供者パスを持っていなくても提供者とみなされる。因みに臓器提供にポシテイブな考えを持っている人が84%に上るにもかかわらず、提供パスを持つ人は36%というのがこれまでの状況なのです。

 子どもと未成年者は今まで通り両親の判断により臓器提供は決められます。
 反対意志は、これから造られる国営の役所で、全市民が持つ「医学関係証明および通知パス」に反対意志を表示する。この役所が出来るまでの間は、家庭医の所に登録する。これらの事務作業は、後日、スマートフォーンで出来るようになる。 
 

 最後にこの案を議会に出した健康省大臣は、「この新規則は市民の持つ自由権を強く侵略するものであるように見えるが、臓器提供は不安と強く結びつくものである。この不安を少なくするためには問題についてとことん話し合うことが必要だと思われる。それを今始めたい」と提案の動機としています。


 このテーマで行われる、経験者や専門医などによるトークショウや、新聞の読者投稿などでの意見は様々です。この提案がどのような結果になるかはまったく未知です。が、あることを政治家達が議会で決めるのではなく、その前に「国民に考えさせる」ことをする政治法もあるのだということをこの臓器提供反論解決策から知りました。そして規則が通らなくても、多くの人が考えることによって、臓器提供者が増え、生を持続出来る人が増えるかもしれないという希望も持ちました。


aokijuku at 10:02│コメント(0)

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