2018年11月24日

ビュッケブルグ歳時記 191

自然との触れあい


 11月も終わりに近付き、黄金に輝いていた秋と、霜が冷たく光る冬が、力競べをする季節になりました。


 もう大分前のことになりますが、ある日、台所でナッツの皮を剥いでいた夕暮れ時、窓越しに、悲鳴のような動物の鳴き声が聞えてきました。不審に思い庭に出てみると、家の壁に沿って造られた、60cmに40cm、深さは50cmほどのコンクリート壕の中からの声と判りました。このような壕は地下室の明かり取りとして造られるもので、地上の天井の部分は金属の格子がはまっています。
 懐中電気で確かめたところ、手のひらに載せられる程のハリネズミ=Igel (イーゲル)の子が、この格子の隙間から小壕に落ちてしまい、母親を呼んでいる声だったのです。


 ハリネズミは、嗅覚、聴覚、味覚が優れている夜行性の動物で、成長すると体長は25cm位になります。甲虫、ミミズ、かたつむり、蠅などや、野菜のくずや果物のかすなどが食料です。庭にある堆肥を作るための場所は彼らの食料倉庫で、夜になると、本当におかしくなる程の舌鼓の音が聞こえることがあります。もう少しお行儀よく食べられないの、といいたい程の音です。英語で "hedgehog" =垣根豚 と呼ばれるのは、この舌ツヅミの音から来ているのだそうです。
 またIgel はネズミや雀などと同じ、文化親近性動物で、暗い森などは避け、庭のある家屋が並ぶ住宅地などに居棲くことを好む生き物だということです。つまり、人間の文化を取り入れて生きている動物なわけです。
 彼らの特性は5ヶ月間の冬眠をすることです。そして冬眠からさめた時が繁殖期で、8、9月に子どもが生まれます。11月に始まる冬眠に耐えるための体重は少なくとも450ー500グラムは必要であるとされています。少し遅れて生まれた子 Igel は、この体重に追いつけない場合が多いのです。この国では Igel は保護されていますから、秋に見つけた体重不足の子Igel を預ける場所も決められています。


 ウチの小豪に落ちたカレは、本当に小さくて、取り出して放してやろうか、どうしようか家族で話し合った結果、この壕で育てようと決まりました。体重の少ないIgel 子 を地下室で育てるのは良くないと聞いていたので、壕なら自然の空気の中なので、そこで餌を与え、太らせようと決めたのです。エゴンという名前も与えました。
 手に入るIgel 世話書にはダニがついていることが多いので、入浴させることと読むと、3人掛かりでお風呂に入れたりもしました。餌は彼の大好きなひき肉や野菜屑など、毎日せっせとゴチソウを与えました。そのためか、よく太ってきたので冬眠したいかもしれないと、クリスマスも真近い日、落ち葉をたくさん入れたダンボール箱で冬ごもり家を作ってやったのです。そしてその後・・・数日が経ったとき、エゴンがいなくなってしまったのです! ようく考えた結果、エゴンは新築の家の屋根によじ登って、格子の隙間から庭に逃れ、自由の身になったのだと思うことにしました。そのくらい身体も大きくなり、肥ったのだと、冬眠邸宅の屋根の高さを考えに入れなかった人間世話家族のあさはかさを押しやって、エゴンの自己解放に同意、祝福して寂しさを紛らわせたことを思い出します。それ以後、庭に Igel の気配、例えば冬のある日、イチイの垣根の下から聞こえる遠慮のないイビキなど、に出合うと、ああ、エゴンの子孫が安心して眠っているのだと、和やかな気分になるのです。


 近くに緑の多い、田舎の小都市の、街外れの、自然との触れあい情景です。


aokijuku at 13:51│コメント(0)

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