2018年11月10日

ビュッケブルグ歳時記 190

メルケル首相の党委員長引退に因み

 コトに当たって、常に感情を交えず理性的に処理をしてきたメルケル首相の施政
でEU国の間では一番安定しているように思えたこの国も、国民の間での不満の声が大きくなったため彼女の党委員長引退決意が発表され、これはいずれ首相引退に繋がることを思うととても残念に思えます。

 先回と先先回のブログでお知らせしたように、東西統合という特別な問題を解決しなければならないドイツの事情を知ると、市民の持つ不満も判るようにも思えるのですが、現在、世界がなんとなく不安な方向に向かっていることを思うと、この国もそれと同じ方向に動くのかと不安になってしまうのです。
 一主婦のわたしには 不安の形も不明瞭なので、具体的にどういうことなのかを、新聞記事や資料を読んだり、政治に大きな関心を持つクレメンス(娘の夫)に訊いたりして勉強しましたので、それを書いてみます。興味のある読者の方が読んで下さると嬉しいです。

 バイエルン地方が本拠のCSU(CDUとの共同党)の州選挙、続くヘッセン州の州選挙は、大連党のCDU(民主党)もSPD(社会民主党)も大敗という結果になりました。その理由は次のとおりです。
 メルケル首相は、本来は保守主義のCDU党を、右派と左派の真ん中辺りに焦点を置くことによって社会事業をおろそかにしない、別の言い方をすると下層階級を忘れない政治を18年間してきたそうです。が、米国をはじめとする自国第一というモットーがこの国の市民の間にも強くなり、この敗北結果になったということです。それに今年3月の大連党結成は苦難の結果に、ようやくまとまったもので、最初から市民は新しい政治を望んでいたとも云えるのです。
 そして、AfD(ドイツのための選択肢党)は、この施政変更を望む市民の声を激怒になるまで煽ることで多くの票を集め、議会席を大きく占める結果となったということです。

 メルケル首相の引退発表後直ぐに後継候補者の立候補が取りざたされているのが今のドイツです。有力者の3候補者をご紹介してみます。

 一人は現役の健康大臣スパーン氏で、この大臣は反メルケル派と云われています。
 次にはクランプ・カーレンバウアーという女性です。彼女はザーランド州の首相でしたが2月にこの職を退き、党の事務総長の役についていて、この事実はメルケル引退を予想してのことと云われてもいるようです。彼女はメルケル派なので、彼女が党委員長になっても政情に大きな変化はないわけです。
 最後はメルツ氏で,彼は以前は党派長でしたがメルケル首相と折り合わず、普通の議員に戻っていたのですが、その間、某金融機関の仕事にかかわっていたということで、その事実が云々されていることが耳に入りますが、政治的実力は認められているようです。
 12月に行われる党大会で、現在候補が決まっているこの3人のうちの一人が党委員長となるわけです。
首相と委員長が目的方針が異なる人となった場合の困難さが憂慮されます。

スパーン氏とメルツ氏はアンチ・メルケルとすると、この2人のうちの一人が党委員長に就いた場合には、CDUは昔とおりの保守党となり、保守的政治をすることになり、これは有産階級に有利な政治をするということになるわけです。
 今迄のメルケル首相の下層を忘れない中間主義政治が無くなるのかと心配だったのですが、今朝の新聞に「メルツ氏は中間コースで行く方針」との記事が載りました。心配は杞憂だったようです。


aokijuku at 00:30│コメント(0)

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