2018年09月22日

ビュッケブルグ歳時記 187

政治錯誤

 夏休みも終わり学校が始まりました。この国では9月が学期の始まりです。今まで幼稚園に通っていた子ども達が、小さな胸を弾ませて学校に通い始める時なのです。そんな時に今騒がれているのは教師不足、特に小学校の教師が足りないということなのです。
 ドイツでは教育は連邦ではなく各州が主権を持っている体制ですが、今回の小学校教師不足は2、3の州を除いてその他の州で問題となっているようです。その中でもベルリン、デユッセルドルフやケルンのあるNrW州、ザクセン州などでは深刻な状況を呈している様子が報道されています。例えば、ある州で今学期は2千人の教師が必要なのに、集まったのは約半数強の教師で、その他は代用教師で授業をしなければならないという状態のようです。

 何が原因かという問いには、例えばベルリン(この都市は、都市が州権を持つ)の場合は政治の過ちであったと主権を持つSPD(社会民主党)が陳述しています。充分な数の小学校教師を養成しなかったこと。これにはいろいろ理由があるようですが、やはり2015年の大量の難民受け入れによる子ども数の増加を予想できなかったということが大きいということです。これは上記のNrW州も商工業都市の多い州であることを考えると同じことだと思われます。こんなところに難民受け入れ政策の影響が出てきていることに驚きます。

 この資格を持った教師の変わりとなるのが Quereinsteiger(これはQuer=斜め横、とeinsteigen=乗り込む、の二つの単語を組み合わせた言葉で、教師不足対策のために使われるようになったようです。以後Qeとします)といわれる、「斜め横から入り込む」というような意味をもつ人達によって埋め合わせされるのです。

 例えば、45歳の、声楽を専門とする音楽教育を受けた女性は、1年間の準備期間に、授業の理論と実際面の講習を受けた後、Qe教師となり、新入生に算数、国語、一般社会科を教えることになるのです。また地質学者で洞窟研究家である49歳の男性B. さんは5年と6学年生を教えることになったそうです。「自分の授業は時々、従来の授業法からはずれることがあるが生徒はそれに対して却って好意的に反応する。それによって私の学校からの代理授業契約期間が延期されたのが嬉しい」との感想を述べています。
 このQe教師の他に、停年退職の教師に呼びかけて以後も教壇に立つことを奨めたり、師範学校の学生達に「レストランの給仕アルバイトよりも小学下級生に授業しよう」とのプラカードを出しているとも耳に入ります。
 
 このような状勢に対して非難の声が高いのにも頷けます。

 この国は戦後、アメリカからの誘いを断って伝統の教育制度を残し、教育国家としての誇りを持っていたのですから。今回の教師不足問題が、この誇りに大きな疑問を投げかけることになったといえるわけです。
 その声への答えとして、既述のとおり過ちを認めた上でベルリン市の教育庁は次のような次期の目的を挙げています。 特にベルリン市の教育の第一目的は、人種、宗教、教養などによる社会的差別をなくすることにある。そのためには言語修練とか移住者や障害者との共存教育も忘れてはならないとしています。

 そして疑問のかけられるQe教師による教育については「このような教育によって未来の学校は「教育機関であることとともに生活に近い機関になるかもしれない」
と、好意的な見方をしていると読みました。願わくはそうであってくれますように。


aokijuku at 00:30│コメント(0)

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