2015年12月26日

ビュッケブルグ歳時記 123

テロの展開をめぐって 2

 先回はフランスと団結するための戦争参加を取り上げましたが、この国で時折耳に入る言葉に「正しい戦争」= gerechter Krieg =正戦論があります。
 日本では聞いたことがないように思うのですが、これはわたしの思い違いかもしれません。その場合は乞許。ドイツでは「この言葉は往々にして誤解して使われることが多いが、対IS戦争はこの論に当て嵌まる」という声も耳に入るので調べてみました。


 正戦論はローマ哲学者のキケロが言い出したことが始まりで、アウグステイが発展させ、スコア派神学が完成させた学論ということです。そして今では国際法上で戦争についての倫理的基準としてよく論議されているということです。


 内容を簡単に書いてみます。2つに分かれた内容を持っています。1.「戦争を始めるにあたって満たすべき条件基準」と 2,「戦争に許される行為の基準」です。
1. は、5つの項目が決められています。a)原因。唯一認められるのは正当防衛で、自分の国を敵から守ること。この中には自国民の生命を防衛することも含まれる。現在では隣の国の安全保持も含まれる。b)正戦は合法権威=国家によって宣言されなければならない。私的な団体には権威はない。c)平和をもたらすため、との目的がはっきりしていること。復讐、統治、経済利益などは目的として認めない。d)問題解決に残されているのが武器による闘いと認められる場合のみ許可。政治的な道ー話し合い、交渉、制裁の余地のある場合は不許可。e)合法的な勝利が予想される場合のみ。これが見えない場合は破壊行為となるわけで、合法ではない。
2. は2項目で条件次のとおりです。a)戦闘員と非戦闘員の区別がはっきりしていること。非戦闘員ー民間人や物を破壊する行為は許されない。b)戦争による余想損害と、戦争の予想費用の釣り合いがとれていること。


 ローマ帝国時代から西欧では聖戦を経てこのような学論になったようですが、一般の人は「正しい戦争なんてない」と思っている人が大部分だと思います。
 パリ・テロの後、フランスの怒りに同乗してドイツも武器を使うことになり反対する人が多いことは前回のプログでお伝えした通りですが、IS戦は正戦論の条件を満たすので戦争よしという意見もあるのです。オバマ大統領がかっての連合軍の対ナチス戦は正戦だったと言っているのと同じです。


 いろいろ意見は分かれますが、戦争自体ではなくても戦後を経験した私たちの年代は戦争は何にも増して、"して欲しくないもの"です。

 フランス、ポーランドなど右翼が勢力を持つようになった昨今、来年だけではなく来る年が全て戦争のない年となってくれように強く願う気持ちからのブログです。皆様、戦争のない良いお年をお迎えください!




aokijuku at 00:06│コメント(0)

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