2015年07月25日

ビュッケブルグ歳時記 113

メルケル像

 先週の日曜日から月曜日の午前中にかけてEG諸国だけではなく世界中がかたずをのんで見守っていたのは、ギリシャへの援助会談の結末だったと思います。
 結果は報道済みだと思いますし、ギリシャがEGから離脱した場合の世界経済界への影響などは専門家に教えを乞うとして、今回の決定にまつわるドイツでの状況、特に決断の立役者であったメルケル首相を巡る国内の模様を、この国に住む一主婦の目を通してお伝えしてみます。

 今、EU経済を率いているのはドイツです。これはこの国の経済施政が良いことの結果であることは認めるべきだと思います。今年は国債の新規発行が46年振りに無しという、借金が増えない事実がこれを証明していると思います。このような良い政治をしたドイツが経済的な統治者の場に置かれることは当然だと思います。
 これ迄にスペインやポルトガルなど主に南欧諸国の不景気でEGが危機に立ったことがあっても、EG国の援助と節約財政を受け入れて努力した国民の力によってそこから脱してきました。これに反してギリシャは「EGに留まりたいが、緊縮政策には反対」との国民投票の結果を出し、緊縮政治を国民が拒否したのです。この結果は「人のお金で相撲を取る」ことを望んでいるととれます。2010年にもギリシャの不況からEUが深淵に立たされたことを思い合わせると、今回3回目の援助をするかどうかにこれ迄以上の慎重さが必要なことは誰にでも判ることです。また、メルケル首相だけでなく、国を建て直すには昔のDrachmeに戻るのが良策だと唱えていたドイツの財務大臣をナチスになぞらえるポスターにし、ドイツはわれわれを脅迫していると公言し、EUからの援助が得られない場合はロシアに頼むなど、脅迫を反対側に置き換えるような醜悪な場面もあったのです。そこからドイツ国民も援助に限界を感じている人も多かったと思います。
 

 今迄のように援助をただただ無駄にしたギリシャ政治への危惧、また共に歩む
フランスが社会党政府であることから来る摩擦、EU継続の必要性など障害が多い会談にメルケル首相は厳然と立ち向かったといわれます。援助は3年の期限付きとし、パルドンは受け入れない。今迄正しく機能していなかった行政機関を改革すること、中でも停年歳制限を上げることと消費税を上げること(これは20日のTVで、13%だったのを23%に上げたと報道されていました)は直ぐ行うことを条件に、最後のゴーサインを出した彼女に、いま「氷の女王」という名が就けられました。これは決して悪い意味のニックネームではないのです。むしろ国民は、大袈裟なゼスチュアーなしに難しい問題を解決して行く首相を全面信用して任せているという感じです。ある調査で55%の市民が今回の首相のやり方に賛意を示しているとの結果が出ています。これは、CDU支持は42%という党支持率調査から、他の党支持者も今回の結果に満足していることが判ります。そして81%の国民がギリシャが約束を守るか否かには疑問を持っている、にも関わらずなのです。

 援助会談は、組合と労働者間の賃金闘争会談と同じで、両者の顔をつぶさない、
いわば妥協の技で結果に導くことに共通点があるとのコメントを読んだのですが、意味深いことだと思います。政治にも寛容さ、妥協精神が必要だと教えられるからです。今回のメルケル首相決断は、団結のための協力精神から、必要な厳しさも忘れていない妥協の技の結晶かもしれません。


aokijuku at 00:05│コメント(0)

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