2014年08月23日

ビュッケブルグ歳時記 91

この国一番のお金持ち


 アメリカで富豪者になる夢は、今まで多くの人達が持ったと思います。今回は、ドイツで良いアイデアを実践に移して国一番のお金持ちになった人の実話をお伝えします。
 個人財産が185億ユーロで富豪表の最先端にあった(過去形の理由は、去る7月に86歳で鬼籍に入ったからです)人は、財閥継続者とか、産業界の大御所などではなく、この国でスーパーが流行する前に「エマおばさんの店」と呼ばれていた、市民が日常必要品を買い物していた小さな個人商店を、世界に名を馳せるデイスカウント・チェーンにしたのです。経営を変えるアイデイアで、70年足らずでこの巨大な富を成したのです。
 

 デイスカウンターとは価引きとか、割引を意味しますが、これは「売る」という最終時点時のことですが、そこにたどり着くまでの時点で、「出来る限りのコトを切り捨てる」とする経営方法だそうです。商品の仕入れから販売までの過程で、経費を削り取るがモットーです。例えば、仕入れは中央会社が一括大量仕入れをし、チェーン支店で売る。商品品目を少なくし、2者選択の機会も限られた商品のみとする。回転を速くするために保存倉庫などを必要としない必需品を主とする。販売店での節約は、包装を解き、一個づつ並べることはせず、ダンボールのまま並べ、セルフサービスで店員数を減らす。値段表も商品別に一枚張りだすのみ、などです。ですから店の中は、倉庫中のような大きな棚に、砂糖、小麦粉、米、ミルクなどが輸送包装のまま並んでいて、棚に値段が張ってあるだけで、一個の商品には値段レッテルがありません。 
 このような経営方針を聞くと、スーパーマーケットとは異なると判ります。
20世紀の小売業の大革新とまで云われているこの経営方式では大幅に格安で売れることになるわけです。
 

 今ではドイツの全国民が知っていると思われる「ALDI」という名は、この経営法で商売を始めた富豪の姓名のAlbrecht とDiscounter の最初の2字をとったものです。ALDI の後、同じような形式の会社が矢継ぎ早に出来、今は6−7の店がこの形式ですが、ALDI が一番大きく、アメリカ、フランス、オーストリア、オランダ、ベルギーなど国外でも成功を収めています。
 この経営法で成功した富豪の経歴は小学校を出た後、パン屋の父親の店で働いた後、自分の店を持ったとき、弟と共同してこの経営方法の実践に乗り出したそうです。そして1960年に、北(弟)と南(兄)ALDI に、分離しました。その後、岐路に立たされたこともあったそうですが成績は伸び、昨年の業績は、全国にある4千3百の支店で5万人の従業員により、約230億ユーロの売り上げということです。


 特格安商店として初期には「貧しい人のための店」と蔑みもあったようですが、今では国民の半数弱が利用しているということです。が、この店によって倒産する小規模商店が多く出ているとか、従業員の扱いが人間性に欠けているとかの批判も耳に入ります。
 この成功者は完璧にメデイアを避けていたので、人物像が無いのですが、富豪になるには短所の批判は免れないのかもしれません。


aokijuku at 22:41│コメント(0)

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