2012年04月22日

ビュッケブルグ歳時記 32 

大学への入学

 大学への進学制度も日本とは随分違います。日本の過激な競争を知っていると信じられないことかもしれませんが、一口で云うと入学試験はないのです。

 これに変わるものはアビトウアー試験です。昨年の歳時記を思い出していただくと判ると思いますが、8年*(未だ9年の州もあり)の高校終了のための試験にパスすると、高校卒業証明書及び大学入学資格書でもあるアビトウアーをとれるのです。大学入学選抜がこの試験の点数にかかっているということになりますから、生徒はここでよく勉強をします。この試験に合格することは,ドイツのどの大学でも勉強出来るということなのです。日本と違う所は、大学の格差が日本のように大きくないということです。ドイツでは大学は原則として水準はどの大学も同じと考えられているのです。

 次に選抜ですが、アビトウアーをとった生徒は、その成績表で希望の大学に応募します。文学部、商・経済科のような普通の科の場合には、アビトウアーの成績の良い生徒から、その大学の収容空席の数だけ選抜されますが、特に医学、歯科学、獣医学、薬学など応募者が収容空席より遥かに多い学科には特殊な入学者制限制度があります。

 第一はアビトウアーの成績に対して Numerus clauses(ヌメルス クラウセス)(NCと略) という点数制限が敷かれます。(NC とはラテン語で、制限された数を意味し、今では入学許可に使われるだけということです)例えば、医科を志望する生徒の平均成績値は,今年は1−1.5(ドイツでは1が優で、5が可です!)と決められます。応募生徒の成績は大部分がこの点数内ということになりますから、選抜生徒数が制限されるわけです。収容空席と応募者の数によってこの数値は毎年変わります。NCに足り無い成績だが、どうしても医学が志望という生徒は「待ち年組」になります。成績如何によりますが待っていれば、いつか医学部に入れるのです。
 このように約20%が、今年のNCに入る生徒から選抜され、20%は待ち年組となり、残りの60%が、最近行われるようになった大学が条件を出して選択するという方法で決まるのです。この条件には例えば、応募前に期間に、数都市で行われる「医者に合うかどうかの試験」の結果や、学生が考えている将来の仕事の形の口頭試験などが含まれます。

 ここでNCの他の使い方も書いておきます。法学部の卒業生が多すぎて、就職難となっているのが現在の社会現象なのですが、このため法科の学生を少なくするためにNCを敷き、法科学生数を制限するなどに使われるのです。

 次に、SfH と呼ばれる公的分配機関があります。この機関は40年の歴史を持ち、ベイビーブームで学生数の多かった時代に活躍したのですが、2000年には進学生の数が減り,分配数も減ってはいますが、既述のように分配の難しい場合によく使われる機構です。分配が難しいと書きましたが、これは各州でそれぞれ違った教育をしていることから来る差を考えると、軽視することは出来ないのです。SfH では、各州毎に応募者を選抜し、州間での競争差を無くす方法をとっているのです。日本のような,文部省一本の線で行われる教育ではない、地方分散教育の生む困難点であるかもしれません。

 このようにドイツの選抜方法はとてもおおらかと云う感じです。ある種のゆとりがあるように思えます。

次回に続く

aokijuku at 00:05│コメント(0)

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