2011年09月17日

スペイン体験記 その13

スペインの音楽教育は日本の音楽教育とは異なりました。
義務教育課程では音楽、芸術系の授業、体育の授業は無く、この分野を学びたい者だけが学ぶというシステムでした。

音楽に関して云えば、王立音楽院、私立の音楽学校、個人レッスンなどが音楽を学ぶ手段でした。当時の音楽院は器楽ごとにその修養年数が異なり、ピアノ、ヴァイオリン、チェロなどは10年間でその他の器楽は8年間という長い年数が課せられていました。
また、器楽のプロフェッショナルだけではなく、音楽史、音楽美学、作曲、指揮、音響学など音楽に関する他のプロフェッショナルもその学科により、学ぶ教科も器楽やコースが色々と設置されていました。

王立音楽院も3段階に分かれており、私が学んだクラシックギターでいうと初等科1〜3 中等科4〜6 高等科7,8 というようになっており、上級王立音楽院(高等科)を頂点にして王立音楽院が各地域にあるという形になっていました。
ちなみに現在はLOGSEという新システムになり、どの器楽も14年間の修養年数になっています。

私の場合、クラシックギターを学びたかったので器楽科コースになるのですが、まず、一から学んで8年間かかるという事実にガッカリし、更にはスペイン語で様々な学科を取得しなければいけない現実に初めは嫌になりました。とにかく、早く日本に戻ることしか頭になかった私にはこの8年間という時間の長さは本当に気が遠くなりました。

当時は6歳から音楽院の入学が認められていました。但し、一年間は音楽理論やソルフェージュのみ行い、基礎的な音楽の語法を学んでから、初めて器楽を学べるシステムになっていました。
また、上級王立音楽院で学ぶためには日本でいう高校を卒業してからではないと入学できないため、6歳から始めても卒業するには最短で20歳ということになります。

このように20歳で音楽院を卒業するには家庭環境の差が大きく投影されます。
しかし、中にはある程度、年齢を重ねてから学びたいという人間のために編入試験や飛び級の試験がありました。
私はもちろん、この編入試験を目指して準備を始めました。編入試験には、実技と音楽理論、ソルフェージュが必要です。もともと、クラシック音楽とは無縁の環境に育った私には全ての準備するべきものがどれも非常に高い高い壁に感じ、実際に音楽院で学んでいる学生達は皆、聡明そうで優雅に私の目には映りました。

また、同じ時期にギターを学びに来ていた日本人とも知り合う機会があり、目標を同じにする同志だと嬉しく思ったのですが、彼らは日本で学び、悩み、解決できない事柄があって“どうしてもスペインで学びたかった“という強い意志、動機があったのですが、私は既に、“日本に帰りたい、でもギターもやって上手くなりたい”という、小学生にも劣る弱い意志と甘ちゃんな考えを持っていたので彼らの会話についていけず、ますます自分の能力の無さを思い知らされることになりました。


この時の私はとにかく何の考えも持たず、出来ない事だらけの上、無知の塊でした。



aokijuku at 00:03│コメント(0)

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