2011年04月24日

前兆について

吉村昭『三陸海岸大津波』(文春文庫)が話題の書となっている。この本の初版は1970年。吉村氏は、たび重なる大津波の被害に遭ってきた三陸海岸の村々を40年以上もまえに丹念に歩き、当時まだ存命中だった明治29年の大津波の生存者2人にも会って聞き書きをする。そして、明治29年の津波、昭和8年の津波、昭和35年のチリ地震津波のことが、『海の壁―三陸沿岸大津波』としてまとめられた。後に文庫本にするときに、「津波を接近してくる壁になぞらえたのだが、少し気取りすぎていると反省し」、表題から「海の壁」を削り、題名を『三陸海岸大津波』に改めたと著者は書いている。しかしながら、この改題を覆すように、とほうもない「海の壁」がきてしまった。

この本は、過去の三陸大津波についてさまざまのことを教えてくれるが、私は地震・津波の前兆についての記述を特に注意深く読んだ。チリ地震津波は別として、明治29年と昭和8年の津波はいずれも三陸沖で地震が起こり津波が
発生したものであり、前兆には下記のような共通点がある。

1) にわかの豊漁、海の生物の異変
・明治29年(津波6月15日)―6月初旬頃から、土地によっては5月下旬から、マグロ、鰹、イワシが押寄せ豊漁となった。ことに鰯の大漁は各地で見られた。また、3月頃からウナギが三陸沿岸に多く見られるようになった。
・昭和8年(津波3月3日)―「鰯の大群が群れをなして、海岸近くに殺到、各漁村は大漁に沸いた」、例年は三陸沿岸の鰯漁は11月で終わるが、年を越えての豊漁は異常なことであった。また、海岸に大量のアワビが打ち寄せられたり、無数の海草類が海岸を埋めるほど漂着したりして海中になにか異変がおこっていることをしめすようでもあった。

2) 井戸水の異変
・井戸水が濁る  ・井戸水が涸れる

3) 異常な光と音
・沖合いに閃光、怪しげな光、怪火、青い光など
・大砲のような音、ドーン・ドーンという音、ゴーツという大音響など

今回の平成の大津波についても、いずれ前兆に関するまとまった報告がでるものと期待している。
「自然のことは自然に聞け」で、自然界にはまだまだ教えられることは多いのだが、いかんせん井戸は水道に変るなどして、人間側のセンサーが失われるか鈍くなっている。天罰を受けやすい体質になってしまったというべきか。


aokijuku at 00:03│コメント(0)

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