2009年11月26日
【From America】「アメリカ流のおもてなし」
旅行をした時に、旅先で受けた「おもてなし」の気遣いに心を打たれることがいろいろありますね。その小さなことで心が温かくなったり、その旅を忘れがたいものしてしてくれたり、皆さんにも思い出に残る旅のエピソードがあるでしょう。
旅の「おもてなし」の心は、国によっても違うでしょう。場所や状況によっても様々でしょう。日本旅館の「おもてなし」は庭、建物、温泉、食事など随所に宿主の思い入れが感じられます。この日本流「おもてなし」はお客のリクエストに応じて用意するのではなく、宿主が「こうして上げたらお客に喜んで貰えるだろう」とお客の要求を察して準備するものですね。特に夕食メニューに関しては地元の幸や季節によって様々でしょう。これは「お任せコース」の宿泊です。お客は一体どんなおもてなしを受けることが出来るか? という楽しみがあります。
一方、アメリカでは自分で選んだホテルの部屋(ベッドのサイズ、部屋の大きさ、部屋からの眺めなどを事前に選択)に泊まり、レストランでメニューを見て選択した食事をする形ですから、用意された「おもてなし」を受けるというよりは、旅の基本形は自分で選択する形になります。こちらは「自己選択コース」の宿泊とでもいえるでしょうか。
カリフォルニア州にあるヨセミテ国立公園に旅行をした際に、ホテルのギフト・ショップで私を感激させてくれるこんな出来事がありましたので、皆さんにも聞いていただきたいと思います。旅先から送られてくる絵葉書を受け取るのは嬉しいことなので、アメリカ国内の主人の母と日本の両親に一枚ずつ絵葉書を送ろうと考えて、ギフト・ショップに行きました。アメリカでは殆どの買い物はクレジット・カードで決済しますので、私はカード以外には、ほんの少しの小銭しか持ち合わせていませんでした。$1ちょっと(100円程度)の絵葉書の購入にカードを使うのは少々はばかれましたが、「クレジット・カードでも良いですか?」と尋ねると「勿論 大丈夫ですよ」と言って会計を済ませてくれました。すると「絵葉書を出すなら切手が必要でしょう?」と聞いてくれたので「国内絵葉書の28セント一枚と国際郵便の98セントを一枚 お願いします」と言いました。「切手は現金のみのお支払いです」と言って切手を用意してくれている間に、小銭入れを覗くとお金が足りません。「現金の持ち合わせがないので国内はがき用の28セントだけで結構です」と小銭をだしました。すると対応してくれた優しそうな中年のギフト・ショップの店員さんは、やおら自分のお財布をだして1ドル札を取り出し、会計の箱にそれを入れると「ホテルのお客様のお世話をするのが私の仕事です。これは私からの気持ちです。どうぞこの98セントの切手を受け取って二枚の絵葉書を投函してください。今すぐに絵はがきをここで書いて店の外にある郵便ポストに入れれば、午後2時には郵便を集めに来ます。午後4時には郵便局に到着して、本日付ヨセミテの消印の押された葉書があて先に送られていきますよ」と言いました。びっくりした私は、「それなら、せめてもこの小銭入れにあるだけの小銭を受け取ってください」と差し出すと「これは私の気持ちですから、そんなことをしないで快く受け取ってください」とニコニコの笑顔で私を見つめてくれました。私は丁寧にお礼を言って、二枚の絵葉書を投函しました。
この「おもてなし」の心はホテルのおもてなしではなく、彼個人から私へのプレゼントです。ヨセミテ国立公園内のホテルに勤めているという彼の仕事に対するプライド、「お客様のお世話をするのが私の仕事です」の言葉に表れるサービス業に携わる者として「お客様第一」をモットーにしている彼の信条がひしひしと伝わって来ました。たった100円弱の金額ですが、私は「アメリカ流おもてなし」に感激して、胸が熱くなりました。
彼のおもてなしでこのホテルの格がグーンと上がったのは勿論のことですが、そういう社員を雇っているホテルの経営陣、経営方針のレベルもまた推して知るべし、ということです。
midori_windgate at 15:28│コメント(0)│