2023年05月13日

ビュッケブルグ歳時記 296

今のドイツ


 ウクライナ戦争の行方もわからないまま、インフレ、食料品の値上がりから庶民の生活が脅かされることから、ストライキ(以下、ストとする)が激化しているこの頃のドイツの世情はお伝えしましたが、今回はその結末をお伝えしてみます。
 それと同時に、日独民主主義の友好国なのに違うところも多くあるのだと気がついたのでそのことも知っていただきたいと思い書き添えてみます。(かっこ内)


1)Blog 294 でお伝えした二つの大きなストのうち、IG Metall の鉄道関係の解決は、4月の末までに3−4回の交渉が行われたにもかかわらず、決裂したままの状態ということです。ですから今までに数度、部分的な鉄道ストがありました。

 (昨年、日本で「電車が数分遅れた」というだけで運転手が減俸処分を受けたという記事がこちらで発表された時は、記事を信じられない人の方が多かったと思われます! それほどこの国の汽車のタイムは不確かなのです)


2)それに反して、 Ver Di の公共サービス仕事についている労働者に対しては大きなコスト上昇が決定されたと4月24日の新聞に発表されました。その様子を少し詳しくお知らせしてみます。

 特別資金として3000ユーロが支給される。その内1240ユーロは今年の7月までに支払われ、残りの金額は月額220ユーロが2024年の2月までに支払われる。その後は200ユーロとなり、これは5、5%の昇給となると考えてよい、という交渉結果が発表されています。

 この昇給を受けられる職種とは幼稚園の先生などの教育者、バスの運転手、水泳所の労働者、汚水処理所労働者、消防関係者、森の管理人、老人介護者などの250万人です。

 例えばゴミ集めの労働者は357ユーロの昇給を受けられることを意味する。この労働賃金協定は今までで一番高い昇給率と言って良いものである、とのコメントが地方自治団体の団長から出ているということです。

 そしてこの現象は雇用者にとってはどのような意味を持つかというと、地方自治団体と街にとっての散財となり17 Milliarden が必要だと発表されています。

 (この国の労働組合の持つ強い力に驚いてしまいます。日本で組合が勝ったことはほとんどないと思われるのですが・・・私の思い違いでしょうか)


3)今年の7月にこの国では年金が値上げされます。考えられていたより多額で東は5、86%、西は4、39%ということです。
 値上げは労働市場が順調であることと、一般の給料が上がることが原因であると発表されています。

 (この国の年金省は、「我が国の年金状況は健康である。3、4Milliarde(10億)の過剰蓄え金もある」との、安定性を誇っているということです)


 このように、鉄道問題を除いてはこの国の未来はそう暗くないように思われるのですが、本当にそうあってくれるように願いながらのブログです。

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2023年05月09日

【From America】「郵便泥棒にご注意」

アメリカのウインドゲイト緑です。

日本の郵便事業は官庁の事業から民間事業に替わったこともあり、アメリカの郵便サービスに比べるととても質が良いと私は思います。日本で郵便物が紛失する、ということは殆どありませんね。また日本は宛名の方に届けるという主義ですが、アメリカは住所に届けるという主義であるところにも違いを感じます。

先日TVのニュースを見ていたら、「小切手の入っている封筒をポストに入れないように」という注意がありました。「それって どうゆうこと?」 と日本の皆さんは思われるでしょう。
これをご理解頂くには二つのことをご説明しないといけません。先ず、アメリカでは現金をあまり使わないで個人が小切手を使うという習慣があります。勿論 最近はクレジットカード支払いが多いのですが、日本なら様々な高額の支払いは銀行振り込みにするのに対して、コンピューターや携帯電話でのサイトでクレジットカードを使いこなせない老人などは特に今でも小切手支払いをする人が多いです。

ポスト次に、郊外の郵便ポストは写真のような形をしていて、郵便屋さんが届けに来るときにポストの横についている旗を揚げておくと、郵便局にあるような郵便ポストに投函する代わりに、郵便物を持って行ってくれるシステムになっています。つまり 日本のポストは郵便を受け取るだけ、に対して、アメリカは郵便を出すことと受け取ることの二つの目的のために使われます。

都会の郵便ポストは集合型が多く、それぞれのポストには鍵がついている物が多いのですが、郊外の郵便ポストは御覧のように誰でも簡単に開け閉め出来てしまいます。ということは郵便ポストの中身を簡単に盗むことが出来ます。その郵便物の中に小切手がある場合には、その宛名を変えて現金化することが出来るため、ターゲットになってしまうわけです。

小切手の宛名をそんなに簡単に変えることが出来るのでしょうか? アルファベットは26文字しかありません。例えば、アメリカの税務署にあたるIRS(Internal Revenue Serviceの略)ですが、「I」の一文字にちょっと線を加えたら「M」になります。すると IRS が MRS に替わります。そうすれば、後はどんな名前でも付けくわえて、あっという間に他の人あての小切手に早変わり、というわけです。
日本には個人の小切手というシステムがないことや 漢字は画数の多くて上記のように簡単に宛名を変化させてしまうことも出来ないので、安全ですね。

鍵のついた都会の郵便ポストでも、投函するための小さな窓口が開いていますから、手が入らなくてもそこから紐がついた道具を中に入れて郵便ポストに投函されている郵便物を盗むこともある、と聞きます。従って一番安全なのは郵便局まで行って、郵便局の建物の中にあるポストに投函することだそうです。

日本は安全で本当に素晴らしい国だと思います。

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2023年05月02日

【From America】「Mulch 根覆い」

アメリカのウインドゲイト緑です。

Mulch01アメリカのニューイングランド地方の春は日本より遅いですが、長い冬が終わるとこちらでは皆さんが庭に出て庭仕事を始めます。その姿が春を告げるサインと言っても過言ではありません。

その手始めは何といっても昨年の秋にやった枯れ葉掃除の総仕上げです。どんなに綺麗にしても、冬の間に再び枯れ葉が飛んできて低木の足元に集まります。それを綺麗にしたら、次はMulchと呼ばれる木を細かく砕いて作った「根覆い」を木の根元や花壇に敷き詰める仕事です。このMulchは様々な色があり、黒、茶色、オレンジ色など自分の好みで選ぶことができます。ガーデンセンターで袋詰めのものも売っていますが、大きな庭の場合、トラックで運んでもらう方法をとる人も多いです。

Mulch 02このMulch(根覆い)をする理由は、樹皮で堆肥することにより植物の水分を保ち、雑草が生えるのを抑え、バクテリアを活発にして良い土壌を育てることが出来るという利点があります。何よりも庭が綺麗に見えて、杉の木などを使うととても良い匂いがします。雑草が生えるのを抑えることも、草むしりをする必要が無くて一石二鳥です。

というわけで、春を告げる暖かい季節になると庭仕事に専念する人があちこちに見られ、春が来たんだなーという気分になります。

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2023年04月25日

【From America】「ソフトシェルクラブ(カニ)」

アメリカのウインドゲイト緑です。
皆さんは、ソフトシェルクラブ(脱皮したての殻が柔らかいカニ)を召し上がったことがありますか?
私の大好物の料理ですが、アメリカが本場のカニ料理です。これはアメリカ東海岸に生息するブルークラブ(ワタリガニの仲間)で脱皮したての皮というか殻というかそれがまだ柔らかい状態なので、殻も全部食べられる状態です。

ソフトシェルクラブカニと言えば固い殻を割って中の身を食べるのが日本人のカニ料理の食べ方ですね。しかし、あの作業はなかなか大変です。アメリカ人は「そんな面倒くさいことをするなら、殻まで食べてしまう方法を探そう」と思ったのかもしれません。
脱皮したてのブルークラブに軽く粉をまぶしてから揚げにします。その上にソースをかけて食べます。カリカリの殻と甘い味の中身を両方楽しめて実に美味しい食べ方です。ソースは様々でホワイトワインソースだったり、タルタルソースだったり、いろいろですが、和風のポン酢で頂くのもまた美味です。

シーズンとしては4月から9月までと言われていますが6月前後が一番のピークです。
アメリカ東海岸メリーランド州のチャサピーク湾ではカニ祭りが開催されることで有名です。私も一度は行ってみたいと思っています。

日本ではなかなかお目にかからないソフトシェルクラブですが、一度お試しになってみてください。きっと忘れられない味になると思います。

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2023年04月22日

ビュッケブルグ歳時記 295

自由で、正直なこの国の政治のあり方


 ドイツでは4年ごとに連邦議会選挙が行われます。今の議会は2021年に行われた選挙でアンペル連立党が政権を得て、政治を施行中ということは周知のことです。

 首都のベルリンは、市だけで他の州のような働きを持っている制度なのですが(このような制度はベルリンの他にハンブルグ、ブレーメン市が同じ)、2021年の選挙の折に、選挙準備に支障があり、選挙場の不備のため選挙権を持つ市民の中のある人たちは選挙が出来なかったという支障が起こったのです。そこで1年半後の今年の3月に選挙をやり直したのです。
 その結果、これまでベルリンを統治していたSPD党がわずかの差でCDU党に負けてしまったのです。


 この結果は、2021年の選挙後の1年半を”赤い市庁舎”として有名な建物の中で、良い政治家として市民からも愛されていた女性市長 Franziska Giffey(以後、F. Gi 氏とする)氏に、二つの政治街道のどちらかを選ばなければならないという基点に立つという試練の場となったのです。

 その基点とは F. Gi 氏が、

1)2021年から今までの1年半をみどりの党と左の党との連立党としての”赤い市庁舎の主、女性市長”という大きな支配権を持ち続けることを選ぶか、

2)女性市長の権利を放棄して、CDUとの連立政治を選ぶか、という歴史的とも言える決断を迫られたわけです。

 2)を選んだ場合には今までの市長としての権力を失うだけではなく、”赤い市庁舎の市長室”も立ち退き、事務室勤務となり、退職手当も支給されないという経済的にも大きな犠牲を伴うという選択だということが新聞紙上に掲載されています。

 このような状態を経て4月の上旬に、F. Gi. 氏の選択、2)が発表されたのです。


 以下は新聞に載った彼女とのインタビューの一部です。

ジャーナリスト(以下 J.): あなたが政治家になる道を選んだ理由は?
 
F. Gi. : ベルリンのNeukoelln 区を変えようと思ったからです。この区に住んでいる恵まれない青少年達と、女性の境遇を見たとき、その貧困の大きさと前途の見えない未来を救いたいと思い、24年前からSPD が適しているという確信から政治界に入ったのです。
 この区では、郊外に住む住人と、中心部に住む住人との間には倫理的な差が大きいと言われることが多いのですが、このよう差は無いことを証明しようと思ったことも、政治に向かった私の目的です。

J. : 今回の結論、CDU の下で働くという決心はメルケル前首相に相談しましか。
 
F. Gi. : 相談はしませんでしたが結果は電話で 報告しました。

J. : 彼女の反応は?

F. Gi. : 脱帽! と言われました。


 選挙をやり直す、ということも初めて聞くことでしたし、その結果もある意味で新鮮な、未来が明るくなるような政治が市民の近くにあるような話なので、お伝えします。

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